研究課題
当該年度は,氷期間氷期のマルチサイクルにおける海水準変動を再現できるGIA数値計算モデルの構築を行った.従来のGIA数値計算モデルは,1サイクルの氷期間氷期として地球表層荷重を仮定し海水準変動を再現するといった仕様となっていた.しかし,本件研究課題においては,一つ前の間氷期である最終間氷期の高海水準の程度やそのタイミングについて,地球内部粘性構造および氷床融解史のパラメータ依存性を検証することが目的であるため,新しいモデリングコードの開発が要求される.また,高海水準のタイミングを精査するためには,高時間分解能での数値実験が必要となるため,従来のモデリングコードの見直しが必要不可欠であった.そこで,まずはこれまでの研究実績がある現状のモデリングコードを単純に拡張する方法を採用した.しかし,現状までのモデリングコードをベースとして氷期間氷期のマルチサイクルを実現しようとすると,これまでの数値実験より大幅に計算時間を必要とするために,広範なパラメータ領域での各依存性を検証することが実質的に困難な状況にあることが判明した.そのため,当該年度において,現状のGIA数値計算モデルに対し抜本的な高速化や高精度化の改良を行った.これまでの計算結果と相互参照しながら開発を行った結果,大幅に計算時間の短縮が見込まれる数値モデリングコードの開発に成功した.当該年度で開発したGIA数値計算コードを用いた試験研究も行い,南極における地殻変動の数値シミュレーションを行い,南極におけるGNSSデータと比較することで,地球内部粘性構造および氷床融解史のパラメータ依存性を検証した.さらに,データを再現可能なパラメータ領域の推定を行い,その結果および解釈について,英文誌へ原著論文として公表した.
2: おおむね順調に進展している
当該年度に実施した,GIA数値計算モデリングコードの大幅な改訂が成功した.また,計算時間短縮や高時間分解能での数値実験を可能とする改良について,当初の計画からの見込み以上の進捗が得られた.さらに,その計算コードを用いた論文も投稿・受理まで至ったことから,その計算コードを用いた本研究課題での数値実験を展開できる見通しがたった.一方,データベース構築については,技術補佐員の雇用ができなかったため,次年度にとりかかる予定となった.
当該年度に実施できなかったデータベース構築を中心に手がけ,モデリングコードの最適化,および氷床力学モデルからの入力を可能とするモデル開発を行う.当該年度に技術補佐員の雇用ができなかったため,次年度ではできるだけ早く該当人材の確保を行う.できるだけ最新のデータを含めた統合的な最終間氷期海水準のデータベースを構築する.
(理由)次年度使用額として生じた額は,本来人件費として計上予定の予算であった.しかし,雇用する技術補佐員の選定を行ったが,必要な技術等要件を満たす人材が見つけられなかったため,今年度の雇用を見送った.(使用計画)今年度実施予定であったデータベース構築のための人材を確保できなかったため,モデル構築・開発に時間をとることになった.次年度,迅速に技術補佐員を雇用し,次年度使用額にてその人件費を充当し,データベース構築を進める計画である.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件)
Polar Science
巻: 31 ページ: 100765~100765
10.1016/j.polar.2021.100765
Geophysical Journal International
巻: 229 ページ: 1914~1926
10.1093/gji/ggac033
巻: 27 ページ: 100557~100557
10.1016/j.polar.2020.100557
Quaternary Science Reviews
巻: 266 ページ: 107079~107079
10.1016/j.quascirev.2021.107079
巻: 29 ページ: 100702~100702
10.1016/j.polar.2021.100702
Polar Data Journal
巻: 5 ページ: 144~156
10.20575/00000033
巻: 5 ページ: 125~143
10.20575/00000032
Geophysical Research Letters
巻: 48 ページ: 1~10
10.1029/2021GL093479
Geology
巻: 49 ページ: 1182~1186
10.1130/G48830.1