研究課題/領域番号 |
21K03688
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
林 豊 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 室長 (40370332)
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研究分担者 |
南 雅晃 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 研究官 (10867162)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 津波事前予測 / 誤差要因 / 津波数値実験 / サイト特性 |
研究実績の概要 |
2016年11月22日に福島県沖の陸のプレート内で発生した地震は、当時、気象庁が量的津波予報に用いるデータベースでこの海域で想定していた南北走向の逆断層型とは異なり、北東―南西走向の正断層型の地震であった。このような、想定と異なる地震の発生が津波予測に与える影響について、2016年福島県沖の地震を基準に、断層モデルパラメータに対する津波高分布の感度を分析した結果は定量的に分析済みであった。気象庁は、2016年福島県沖の地震の際の津波の過小予測を踏まえて、即時津波予測に用いるデータベースに収録する地震シナリオを改善するため、走向が想定と実際に発生している地震とで大きく異なる海域に限定して一部シナリオを追加したが、この考え方やシナリオ追加の判断に用いた基準の妥当性を検討するとともい、この改善作業の経過を整理した。 1586年のペルー沖の地震による日本への津波、1537年のメキシコの地震による津波、1780年ウルップ島地震による日本への津波は、日本の文献における暦換算ミス・誤訳・誤植による偽津波だと判明するなど、誤った津波データが次々に判明している。そこで、津波のカタログに収録されたデータのうち、19世紀以前の日本に遠地津波が及んだとする情報の信頼性について確認作業を進めるため、カタログに収録された遠地津波の根拠となった国内外の文献を収集して、分析を進めた。地震と同時代に成立した文献が見つからないものもあり、他にも誤った歴史遠地津波地震がある可能性が高いことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、想定地震を用いた数値実験を通じて、津波予測の誤差を、地震モデルの違いが沖合の津波波形に与える影響(ソースの影響)と、沖合の津波波形の違いが海岸での津波高に与える影響(サイトの影響)とに分離・比較し、また、その他の誤差の検討も総合して、津波事前予測の精度における本質的な誤差要因が何かをまとめる計画である。 ニ年度目までに、海域活断層による2016年福島県沖の地震を基準としたケーススタディの結果から、津波予測の誤差のうち、地震モデルの違い(ソースの影響)が津波高に与える影響を一連分析するとともに、津波予測の実務におけるこの影響への対応方法をまとめることができた。当初の研究予定にはなかったが、国内外で広く利用されているカタログに偽津波が含まれている例を見つけることで、津波カタログ値を利用して想定地震モデルを設定することによる信頼性の問題の検討も進んでいる。また、今後実施する数値実験に向けての計算諸条件の設定の準備も進めている。 以上のことから、本研究課題は当初の目標に向けて、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
津波数値実験に必要な計算諸条件等(モデル等、多数)を設定する。誤差程度に異なる多数の波源モデルと地形モデルも用意する。数値実験の対象領域は、内湾を含む領域、弧状の海岸線を含む領域、リアス式海岸を含む領域を選択し、想定地震として、プレート境界型、海洋プレート内の地震、海域活断層による地震を選択する。 津波数値実験を行い、それらの結果から、各想定地震・各津波波形出力点について、津波予測の誤差を、地震モデルの違いが沖合の津波波形に与える影響(ソースの影響)と、沖合の津波波形の違いが海岸での津波高に与える影響(サイトの影響)とに分離・比較する。比較結果、その他の誤差の検討を総合し、津波事前予測の精度における本質的な誤差要因が何かの観点も含めて、研究成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、翌年度分として請求している助成金と合せて、主に研究成果の発表に必要となる経費にあてて使用する計画である。
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