研究課題/領域番号 |
21K03690
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田邉 晋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (50415709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中川低地 / 沖積層 / 堆積相 / 放射性炭素年代 / 海水準変動 / 泥炭層 |
研究実績の概要 |
令和4年度は,令和3年度末に掘削した33 m長と27 m長のボーリングコア堆積物の解析を行った.コア堆積物は,産業技術総合研究所地質調査総合センターにおいてCTスキャン画像の撮影の後に半裁し,岩相と生物化石相に着目した記載を行った.その結果,2本のコア堆積物における沖積層は,下位より,網状河川礫層,蛇行河川泥層,エスチュアリー泥層,デルタ砂泥層,表層氾濫原泥層に区分された.エスチュアリー泥層とデルタ砂泥層からは再堆積したヌマコダキガイ類が多産した.また,デルタ砂泥層は内湾生,表層氾濫原泥層は淡水生の珪藻化石群集で特徴づけられる.表層氾濫原堆積物の基底部は層厚が約20 cmの有機質シルト層から構成される.コア堆積物からは43試料の植物片を採取し,韓国地質資源研究院と名古屋大学の加速器質量分析計を用いて放射性炭素年代値を測定した.蛇行河川泥層の標高-27 mからは10.0 cal kyr BPの年代値が得られた.他の42試料の植物片は,これよりも新しい年代値を示す.また,エスチュアリー泥層とデルタ砂泥層の境界である最大海氾濫面は7.2 cal kyr BPの年代値を示す.デルタ砂泥層と表層氾濫原泥層の境界の年代は,それぞれのコア堆積物において,5.4~3.5 cal kyr BPと4.7~3.8 cal kyr BPを示し,1.9~0.9 kyr のハイエイタスを形成することが解明された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2本のコア堆積物からは,本研究でターゲットとしていた有機物シルト層(泥炭層)が,期待通りに検出された.また,その基底面の形成年代はおおよそ4千年前を示し,縄文海進の終焉の年代とほぼ一致する.2本のコア堆積物には,デルタ砂泥層の上位に干潟堆積物が存在しない.これは縄文海進の終焉に伴う海水準の低下によって,干潟堆積物が削剥され,侵食面としてハイエイタスが形成された可能性を示す.有機質シルト層の直上の氾濫原泥層は,3.3 cal kyr BPおよび2.4 cal kyr BP以降の年代値を示し,「弥生の小海退」の極相期である約3千年前以降に堆積した.これらの事象は,有機質シルト層が縄文海進の終焉から「弥生の小海退」の極相期にかけた4~3千年前の海水準低下に伴って形成され,表層氾濫原泥層が「弥生の小海退」極相期の3千年前以降の海水準上昇に伴って,有機質シルト層にオンラップして形成されたことを示唆する.これは,本研究の実施に際して立てた仮説を支持するものである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,4~3千年前の海水準低下に伴って形成されたと考えられる有機質シルト層の放射性炭素年代測定を,さらに高密度に行う.具体的には,有機物シルト層を構成する植物片と微粒子有機物を分離し,それぞれの放射性炭素年代値を測定する.これによって,微粒子有機物に黒ボク土を起源とする古い有機物が含まれるかを確かめる.また,中川低地北部と類似した有機質シルト層が分布する利根川下流低地の沖積層においても同様の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響で学会に参加しなかったため.令和5年度に旅費と消耗品費として使用する.
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