関東平野中央部の中川低地と加須低地には,標高0 m付近にいわゆる泥炭層と呼ばれる地層が広く分布する.しかしこの泥炭層は,未分解の植物片からなる一般的な泥炭とは異なり,微粒子有機物を主体とし,沖積低地の上流や台地の縁にかけて厚層化する.本研究では,この泥炭層の形成メカニズムの解明を目的として,堆積物コアの掘削と解析ならびに高密度な放射性炭素年代測定を行った.その結果,中川低地の泥炭層は,当初可能性のひとつとして示したように,現地性の黒泥を主体とすること,また内陸部に広域的に泥炭層が発達した理由として,弥生の小海退に伴う上流域での砕屑物のバイパスと下流域での砕屑物の堆積が同期したことが挙げられる.
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