研究課題/領域番号 |
21K03698
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
梅本 幸一郎 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (60726991)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 高圧力 / 固体鉄合金 |
研究実績の概要 |
地球より大きな地球型系外惑星(スーパーアース)のマントル深部の圧力下において、ポストポストペロブスカイト相であるMg2SiO4とMgSi2O5について、第一原理計算で秩序無秩序転移を予言し、ポストポストペロブスカイト相転移の相図を準調和近似の範囲内で完成させた。この秩序無秩序転移は、Mg2SiO4とMgSi2O5それぞれにおいて局所的にMg原子とSi原子周辺の酸素構造が非常に似通っていることにより、エントロピーの効果で温度によって誘起される構造相転移である。これまでは高圧相転移が理論的に予言されるときは、静的な条件(温度の効果を考えない)において最安定構造を予言することによって行われてきたが、今回の秩序無秩序転移はその手法では予言できない新奇な構造相転移である。
鉄と硫黄との合金相であるFe2Sはorthorhombic系の構造をとる。実験的に、高圧下で対称性を保ちながら体積が急激に減少する構造相転移が存在することが示されていた。この相転移に対して第一原理計算を行い、磁性の変化と構造相転移が直接関係することをつきとめた。この磁性の変化と構造相転移を研究するにあたり、これまで使っていた鉄の擬ポテンシャルでは不十分であることがわかったので、その改良をおこなった。結果、実験と整合的な構造相転移圧力を得ることに成功した。
地球内核相当の圧力において、鉄水素合金の構造は水素の濃度に依存してfccあるいはhcp構造をとる。準調和近似の範囲内で、構造を温度と圧力に加えて水素濃度の関数として表すことに成功しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで使っていた鉄の擬ポテンシャルについて改善しなければならない点を発見したので、鉄の擬ポテンシャルの再設計を行なった。この作業に思いのほか時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
擬ポテンシャルの再設計が完了したので、あとは当初予定していた研究を進める準備は整った。 固体鉄合金について、水素以外の軽元素(硫黄珪素炭素)について、準調和近似の範囲内で、構造を温度と圧力に加えて水素濃度の関数として表すことを目指す。 地球科学への直接の応用としては、鉄のhcp構造に軽元素を少量入れて、分子動力学シミュレーションにより、密度と音速を、温度と圧力そして軽元素の濃度の関数として表し、地震波測定との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定だった海外学会(AGU Fall meeting)がコロナの影響でオンライン参加だったため、旅費を利用しなかった。 擬ポテンシャルの再開発に時間がかかってしまい、計算機に使った予算が少なかった。擬ポテンシャルの再開発が済んだので、今後計算機資源に予算を利用する。
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