研究課題/領域番号 |
21K03700
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
柴田 智郎 福岡大学, 理学部, 教授 (80446369)
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研究分担者 |
高畑 直人 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マントル起源 / 深部流体 / 質量分析装置 / ヘリウム同位体比 / 水素吸蔵合金 / 残留水素 |
研究実績の概要 |
地球内部の深部流体は、液体-岩石間の化学反応を通じて、多様な含水鉱物や変成岩、火成岩を産出するばかりでなく、岩石の強度低下をもたらすことから、火山噴火や地震発生のメカニズムに深く関係していると考えられている。そのため、深部流体の挙動を直接的および連続的に観測できる手法の開発が期待されている。なかでもヘリウム同位体比は、深部流体の挙動を直接的に提示する数少ないパラメータである。現在、火山ガスや地下水などの試料中のヘリウム同位体比の測定は、実験室の超高真空精製ラインと同位体質量分析計を組み合わせた装置を用いて行っている。試料中のヘリウムを真空中で抽出するが、地下水試料はもちろんのこと、火山ガス中に含まれている水分が真空ラインに混入し、真空ライン中の水素濃度が高くなり、分子量3の水素分子イオンが質量数3のヘリウムに影響を与え、ヘリウム同位体比の分析精度が悪くなる。四重極質量分析計においては、質量数4のヘリウムに分子量3の水素分子イオンのピークが重なり、シグナル/ノイズ比が低下する。そこで本研究の目的は、近年になり急速に水素吸着性能が高くなっている水素吸蔵合金を用いて、真空中に残留している水素を簡易かつ迅速に除去できる手法を確立し、質量分析装置内に残留している水素を減らすことである。令和3年度にはランタン-ニッケル系合金の吸蔵合金を用いて、真空中の水素除去を試みたが、残留水素の除去が十分でなかったため、令和4年度は新たに2種類のジルコニウム-バナジウム合金を用いて試験し、実際に採取した火山ガスや地下水試料を用いて、ヘリウム同位体比を繰り返し測定し、精度の向上を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度(1年次)には、現行の真空精製ラインを変更し、別系統の真空精製ラインを設置する予定であったが、コロナ禍による半導体関連の部品不足のため真空部品や水素吸蔵合金の納入に時間がかかり、全体的に計画が遅れていた。令和3年度末に部品が納入され、真空ラインの組み立てと試験を開始したが、令和4年度(2年次)になり、研究代表者が年度途中で所属機関を異動することになり、それに伴い移管手続きと分析装置と真空精製ラインの運搬に時間がかかったこと、また、運搬後に分析装置と真空精製ラインの組み立て、試験をしたが、装置の調子が悪い状態が続いていた。新たに購入した2種類のジルコニウム-バナジウム合金を用いて、真空中ライン中の残留水素の除去を試みる予定であったが、十分な試験ができていないため、計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は最終年次となるので、当初の目的通り、入手した水素吸蔵合金の評価をするとともに、マントル起源深部流体が含まれた火山ガスや地下水などの試料中のヘリウム同位体比を高精度で分析するノウハウを確立する。現在不良状態の質量分析装置に対応し、早急に試験を再開できるようにするとともに、真空系内の残留水素除去に関しては、技術開発が日々進んでいるので、最新情報を収集し、比較試験をして水素濃度とヘリウムや二酸化炭素、窒素などの影響を検証し、精度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度(1年次)は、コロナ禍による半導体不足により、対面での研究打合や真空ラインの改良ができなかったこと、また、真空部品などの調達が遅れたため、計画通りに予算執行ができなかったこと、また、令和4年度(2年次)は、研究代表者が年度途中で所属機関を異動することになり、機器の移管後、トラブルに見舞われ、十分な研究ができなかったことで、火山ガスや地下水試料の採取ができなかったため、予定していた予算が使用できなかった。令和5年度(最終年次)は計画の遅れを取り戻し、実際に採取した火山ガスや地下水試料のヘリウム同位体比を繰り返し測定し、精度の向上を評価し、分析手法を確立する。四重極質量分析計においても同様に、水素濃度とヘリウムや二酸化炭素、窒素などの影響を検証し、精度を評価する。
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