研究課題/領域番号 |
21K03702
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
廣瀬 仁 神戸大学, 都市安全研究センター, 准教授 (00465965)
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研究分担者 |
宮崎 真一 京都大学, 理学研究科, 教授 (00334285)
西村 卓也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90370808)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | GNSS / 地殻変動 / スロースリップイベント / 微動 / プレート境界 / すべり過程 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
地球上の様々なプレート沈み込み帯で発生しているスロー地震の発生メカニズムの理解、および、スロー地震間の相互作用を解明することを目的に研究を実施している。 豊後水道周辺域にて発生しているスロースリップイベント (SSE) による地殻変動をとらえるため、独自に設置したGNSS観測点の保守作業等を実施し、観測およびデータ収集を継続した。これまでの観測データに基づき、2015~2016年頃および2018~2019年頃に豊後水道で発生した2つのSSEのすべり域を推定した。2015~2016年のSSEでは顕著な微動活動が伴わなかったのに対し、2018~2019年のSSEでは明らかな深部微動を伴った。推定されたすべり過程から、前者ではSSEのすべりが微動発生域に達しなかったのに対し、後者では微動発生域まですべりが伝播していた。このことより豊後水道では微動発生域にすべりが達することによって微動が誘発されることが強く示唆される。この成果について論文を投稿した。 また、GNSSにくらべ、より小規模なSSEによる地殻変動を観測することができる傾斜計データから、SSEによる変動を自動検知するための機械学習モデルの開発に着手した。地震計の波形データから波の到達時刻を読み取るための深層学習手法を参考にしている。この学習のためには一般に非常に多数の教師データ (入力データと正解の組) が必要とされているが、SSEの観測事例はその数に比べたら非常に少ないので、擬似的な観測データを生成することで教師データの作成を試みている。まだ初期的な段階なので、今後改善に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の基盤となる地殻変動観測について順調に継続できている。GNSSデータ解析によるSSEすべり過程の結果を論文投稿できた。傾斜時系列データからSSEによる地殻変動を抽出するための機械学習モデルの開発にも着手した。
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今後の研究の推進方策 |
GNSS観測を引き続き継続し、地殻変動のモニタリングに資する。地殻変動データのインバージョンから求められた SSE のすべり過程と、微動など他の活動との定量化を目指した研究を開始する。地殻変動時系列データから SSE による変動を抽出するための機械学習モデルの開発も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
GNSS観測設備の保守作業に必要な出張旅費や消耗品等の経費を想定していたが、幸い大きな不具合もなく順調に稼働したため、その経費に残額が生じた。また論文掲載料の支出を見込んでいたが、当該論文を年度内に出版できなかったため、次年度に支出する。ワークステーションの調達も予定していたが、当該年度内の契約では2年近く前に発売された旧世代のプロセッサ等を用いた製品しか購入できないことが分かり、次年度初めに調達することとした。
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