本研究では、2種類の軽元素を含む液体鉄合金の高圧下における不混和性を解明する目的で、分子動力学シミュレーションを行っている。主要な研究成果は以下の通りである。
2021年度に液体Fe-Si-O、2022度に液体Fe-H-O、Fe-C-O、Fe-S-O混合系の第一原理分子動力学シミュレーションを行い、高圧環境下における液体中の局所構造、原子間結合状態を明らかにした。高圧環境下の液体状態においても、Si-O、C-C間には比較的強い共有結合的な相互作用が見られた。特にSi-O間の共有結合によって、Siの電荷の分布に広がりが現れる、具体的には、Oと結合しているSiは、Oと結合していないSiに比べ正の方向に分布が偏ることが明らかとなった。この電荷の偏りによって、Fe-Si-Oで不混和が起こる可能性が示唆された。また、2022年度から2023年度にかけて、第一原理分子動力学シミュレーションの結果を教師データとして、機械学習型の原子間ポテンシャル(人工ニューラルネットワーク原子間ポテンシャル)を作成した。2023年度はアクティブラーニングの手法を取り入れることで計算システムの大規模化を行うことに成功し、大きな系で液体Fe-Si-O系の共有結合的相互作用とそれに伴う不混和的な挙動を確認することができた。
また、炭素ー水素混合系にも第一原理分子動力学法を適用し、原子間結合状態の高圧力環境の影響を解明した。炭素ー炭素間の結合状態の変化から、炭素ー水素混合系において、高圧下で炭素が凝集する挙動を明らかにすることに成功した。
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