研究課題/領域番号 |
21K03712
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 徳行 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (00144692)
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研究分担者 |
亀田 純 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40568713)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 付加体 / アンダースラスト堆積物 / メタンガス / 水素ガス / 泥火山 / ガスハイドレート / 水溶性ガス田 / 沈み込み帯 |
研究実績の概要 |
(1)南海トラフの付加体・アンダースラスト堆積物の有機物濃度についての文献調査:フィリッピン海プレートの沈み込みに伴って地殻深部にもたらされる付加体とアンダースラスト堆積物の有機物(有機炭素)濃度について国際共同海洋研究プログラム(ODP/ DSDP/IODP)のInitial Report等を活用し調査研究を行った。 (2)付加体とアンダースラスト堆積物中での熱分解起源メタン・水素生成の反応速度モデル:海洋プレートの沈み込みによってもたらされる堆積物の有機炭素濃度が低いことから,オイル・湿性ガスの排出が乏しいと考えられ,熱分解起源メタンの生成は閉鎖系で進行するものと見なせる。このような条件下での熱分解メタン生成の反応速度モデルを構築した。 (3)付加体堆積岩中の残留ガス分析:改良した残留ガス分析システムによって古い付加体泥質岩中の残留ガス分析を行い,熱分解起源のメタンと水素の生成タイミングをあらためて確認した。 (4)南海トラフ沈み込み帯での熱分解起源メタンのフラックス:南海トラフ熊野灘での付加体とアンダースラスト堆積物の移動速度について検討し,堆積有機物の昇温速度や熱分解起源メタンの生成速度を検討した。その結果,付加体よりもアンダースラスト堆積物中でのメタン生成速度がはるかに大きいことを明らかにした。 (5)南海トラフ沈み込み帯における熱分解起源メタンの生成帯の広域的分布:同地域において沈み込んでいるアンダースラスト堆積物の熱分解起源メタン生成帯の地下分布を明らかにした。それと実際に観察される泥火山,ガスハイドレートまたはBSR(海底疑似反射面),水溶性ガス田の分布との関係について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
泥質岩残留ガス分析システムの改良が予想以上に進展し,これまでの分析結果を再確認することができた。閉鎖系での熱分解メタン生成の反応速度モデルを予想以上に早く構築することができた。そのため,初年度から論文作成に着手することができ,予定よりも早い段階で研究成果を公表できる見通しがついた。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている南海トラフでのフィリッピン海プレートの沈み込みにともなう熱分解起源メタン・水素の生成と泥火山,ガスハイドレート,水溶性ガス田形成に関する論文を完成させ国際誌に投稿する。次に関東地方の沈み込み帯における熱分解メタン・水素の生成に関する検討を行い,南関東ガス田,茂原水溶性ガス田との関わりに関して検討し,学会発表と論文作成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症対策のためにフィールド調査や学会出席を予定通りに実施することができず,関係する旅費,謝金,物品費を予定通りに支出できなかった。これらは次年度に実施する予定である。
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