研究課題
本研究の主な目的は、データ科学的手法の1つであるニューラルネットワークを用いて偏微分方程式を解く新たな手法 Physics-Informed Neural Networks (以後PINNと呼ぶ)がマントルダイナミクスの物理モデリングに対して適用可能かどうかを明らかにすることである。昨年度まで2次元箱型モデル形状における熱対流の問題に対してPINNの適用を試みてきたが、予測精度が悪い、計算が収束しない、また計算時間がかかりすぎるなどの問題が明らかになっていた。そのため今年度はより単純な問題である1次元非定常熱伝導方程式に対してPINNの適用を試みた。具体的には、海洋プレートの冷却に対応する、最初一様に高温であった物質がある時間から地表で急速に冷却されるという問題を考慮した。その結果、温度の時空間変化をPINNにより高精度で予測することはできなかった。これは主に地表付近の急激な温度変化をニューラルネットワークで表現する際の困難さが原因であると思われる。その証拠に、初期条件として地表付近で滑らかに変化するような温度を仮定するとPINNによる予測精度は大きく上昇した。また将来的にPINNを適用することを見据えて、有限要素法を用いて中央海嶺-トランスフォーム断層系におけるマントル枯渇度の予測を行い、その内容についてまとめた論文1編が国際誌に掲載された。研究期間全体を通して、現段階ではPINNは比較的単純な熱対流や熱伝導の問題に適用することさえ難しいということが明らかになった。しかしPINNとその関連手法は近年急速に発展しつつあり、将来的にはマントルダイナミクスの問題にも適用できるのではないかと期待している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 25 ページ: -
10.1029/2023GC011227
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