申請者が行ったCaF2を対象とした放射光X線を使ったXRD実験では、第一原理計算が予想する相図とは異なり、より広い領域にγ相が存在することを見出した。例えば、第一原理計算は、200℃においては、10 GPaでγ相への相転移が起こることを予想しているが、XRD実験では約7 GPaでγ相への転移を確認している。本年度は、α-γ相境界に関する不一致を解消することを目的として 昨年度に新たに導入した高温高圧下で測定可能なラマン分光装置を用いて、CaF2のα-γ相転移境界を決定する実験を実施した。200℃の温度下で加圧しながらラマン分光測定を行った。その結果、9.3 GPaでγ相が出現し、第一原理計算の予想よりも低い圧力でγ相転移が起こることを確認した。このように、ラマン分光分析とXRD測定の結果は一致しており、実験研究間では矛盾のない結果を得ることに成功した。
|