研究課題
東北・関西の新第三系中新統のカキ化石層を調査し,厚ガキ(Crassostrea gravitesta)と呼ばれてきた肥厚大型化する絶滅種や,マガキ(Crassostrea gigas)に比較される化石種の形態分類学的検討と密集層のタフォノミー解析を並行して進めた.露頭調査は宮城県丸森町の迫層,三重県の一志層群,滋賀県の鮎河層群,京都府宇治田原町の綴喜層群で行った.博物館標本調査も,京大博物館,東北大自然史標本館,琵琶湖博物館で実施し,日本各地の多様なカキ類の形態・種内変異・産状などを把握できた.厚ガキには略丸型の肥厚が顕著な“丸厚ガキ”,縦長卵形の“丸長厚ガキ”,棒状に肥厚する“長厚ガキ”があり,群生様式や産状も異なっている.秋田県須郷田層のC. gravitestaの模式標本は紛失しているが,原記載を見る限り“丸長厚ガキ”で,17-16.5Maの門の沢動物群の一員とみなされる.一方,鮎河・綴喜層群の“長厚ガキ”は18-17.5Maの明世動物群に含まれる.しかし,“丸厚ガキ”の層序的・地理的分布はまだ確定できていない.下部白亜系のカキ化石層として,和歌山県の湯浅層,三重県鳥羽市の松尾層を調査し,いずれも小型薄殻で白亜紀中期以降のカキ類とは形態・産状ともにかなり異なることが判明した.現世マガキについては,東京湾三番瀬,福島県松川浦,宮城県松島湾櫃が浦,万石浦の,異なる地形,底質,海況の干潟で精査し,群体や礁の分布と産状の多様性の実態を把握し,東京湾ではこの40年,東北の3干潟では東日本大震災津波後の10数年での成長,再生状態を把握した.これまでの成果を総合すると,白亜紀前期,中期,後期,古第三紀始新世,漸新世,新第三紀中新世,中新世後期以降と,各時代のカキ類は,異なる形態の種が,場合によって複数種が,異なる干潟環境で生態を分化させながら進化してきたと推定される.
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Geological Society, London, Special Publications
巻: 544 ページ: 1-55
10.1144/SP544-2023-127
茨城県自然博物館研究報告
巻: 26 ページ: 1-19