現生カキ礁は沿岸環境の保全やカキ礁自体の有機物濾過能力などで注目され,研究例は多いが,カキ礁全体の発達史に関する研究は少ない.厚岸湖の死滅カキ礁,松川浦や東京湾三番瀬の現生カキ礁でも同様である.地質時代のカキ類の生態戦略やカキ礁の進化に関する研究が幾つかあるが,そこで示されたモデルを実証する個々のカキ化石層の詳細な研究例は国内外ともに少ない.中国渤海湾の現生・完新世のカキ礁の研究が多数公表され,東京湾岸平野地下の化石カキ礁の層序的位置から縄文海進期の海水準変動曲線が復元されており,潮間帯に生息するマガキ類は海水準の示標になっており重要である.
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