研究課題
白亜紀末には10kmサイズの巨大隕石が地球に衝突し、それが「引きがね」となって生物大量絶滅が起きた。巨大隕石衝突はあくまで引きがねであり、それに伴って起こる環境変動が生物大量絶滅の原因であるが、それが何かは明確になっていない。白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界層には隕石に由来する親鉄元素の濃縮が見出されているが、硫化物を形成しやすい親銅元素もK-Pg境界層に濃縮している。親銅元素/親鉄元素比は2-3桁程度コンドライト組成よりも高く、K-Pg境界の親銅元素は隕石由来ではなく、地表で起こる何らかの現象を反映して高濃度になっている。親銅元素組成からこの隕石衝突直後に起きた現象を捉えることを目的として研究を進めた。白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界試料に対してレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)による局所微量元素分析を適用した。イオンカウントが高い相関を示す元素同士でも、イオンカウント比(例えば、As/Fe)が必ずしも一様ではなく、ビーム強度により元素比が変化していることが分かった。このことは元素比の異なる粒子が存在していることを意味する。ビーム強度の大きな粒子は大きな粒子に由来するので、粒子径により元素比が異なっていることを示している。このような粒子径の違いは生成条件の違いを反映していると考えられる。Feビーム強度の高い粒子(大粒子)はヒ素、鉛といった元素が富んでいた。ヒ素は特に酸化鉄に吸着し、海底に供給されやすい元素であるある。これらの元素は、隕石衝突に伴ってばらまかれた鉄酸化物とともに供給されたと考えられる。一方で、Feビーム強度の低い粒子(微粒子)は、これとは異なる環境で生成されたと考えられる。このように局所分析によりその生成されたタイミングの異なる粒子を分離して測定することが可能になった。
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