研究実績の概要 |
エディアカラ紀末から前期カンブリア紀は急激な生物放散が生じた時代である.微生物類礁の特徴もこの間に大きく変化した.エディアカラ紀末から前期カンブリア紀での礁生態系の変遷過程と背後の海洋環境の変化を明らかにするために検討を進めている. モンゴル西部地域では,Zuun-Arts層 (上部エディアカラ系) ではストロマトライトで特徴付けられる微生物類礁が発達するのに対し,Bayan Gol層下部 (下部カンブリア系) では石灰質微生物類を豊富に産する微生物類礁 (スロンボライト礁) が発達する.石灰質微生物類の種類は,Bayan Gol層下部ではRenalcis, Korilophytonの2種類であるのに対し,Bayan Gol層上部からSalaany Gol層 (カンブリア系第2統第3階) へと,Epiphyton, Gordonophytonなど12種類まで急増する.さらに,これらスロンボライト礁は,Zuunia chimidtsereni, Protohertzina anabarica, Protohertzina unguliformisで特徴付けられるカンブリア紀最前期に特徴的な微小骨格化石群の出現後に生じ,微小骨格化石群の多様化と同時に石灰質微生物類の多様化も生じている. 中国山東省に産する朱砂洞層 (カンブリア系第2統第3階) は,北中国から産する顕生累代最古の礁に相当する.それらは,Epiphyton, Kordephyton, Amgainaなどの豊富な石灰質微生物類によって形成された微生物類礁である.カンブリア紀第2世には,世界的には造礁骨格生物古杯類が大繁栄していたが,北中国からは古杯類の産出は知られていない.造礁骨格生物の有無にかかわらず石灰質微生物類は多様であり,下部カンブリア系における石灰質微生物類の多様化との関係についてさらに検討を進めている.
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