研究課題/領域番号 |
21K03741
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
芳賀 拓真 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30728233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 無脊椎動物化石 / 化石群集 / 生きた化石 / 固有生物 / 最古 / 石灰岩 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス対策の影響により,初年度に計画していた現地調査は全て延期することとした。初年度は,新型コロナウィルスに関連する状況が改善次第,速やかに現地調査ができるよう関係先と調整を行ったほか,過去の予備調査で得た南大東島とフィリピン・ルソン島産の試料を対象として,化石の剖出と鑑定を進め,また海底洞窟堆積物の年代決定のため微化石の抽出と鑑定を試みた。 微化石の抽出,およびmicro-CTと岩石薄片による底生有孔虫の探索と鑑定は,いずれも決定的な成果を得ることができなかった。いっぽう,南大東島の海底洞窟化石群の解明においては幾つかの重要な成果が得られた。海底洞窟奥部の堆積物に特に多産するやや小型のPluviostillaを多数検討してタイプ標本と比較した結果,現生のアマダレガイと同種と判断されたことが最大の成果である。また,ルソン島の後期中新統カバガン層の「海底洞窟様化石群集」については,得られたツキヨミガイは現生種であることが明らかとなった。さらに,両群集の比較により,南大東島とカバガン層に産するアマガイモドキ類は同種であり,絶滅種と考えられることなどが明らかとなった。 本研究課題では,現地調査によって分析・化石剖出のための試料を収集することが欠かせない。初年度では延期せざるを得なかった南大東島・北大東島,沖縄本島での現地調査に向けて関係先と調整を行なった結果,次年度の5月中旬に実施できる見通しである。これにより,初年度計画していた地質調査と網羅的な試料収集を達成する。そして,速やかに化石の剖出と解析を進め,次年度に計画している南大東島・北大東島・沖縄本島での追加調査を,当初の予定通り11月あるいは2023年3月に実施する。また,海外渡航上の規制が緩和され次第,フィリピン・セブ島にて新規化石群の探索のための現地調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度は南大東島で海底洞窟堆積物の調査と試料収集を行ない,化石群の検討や堆積物の解析を行う計画であった。また,新規な海底洞窟化石群の探索のため,北大東島及び沖縄本島において予備調査を行うことも計画していた。しかし,新型コロナウィルス対策のため離島への渡航には制約があり,現地調査を延期して次年度に行うこととした。そのため,本年度は本課題採択前の予察的な調査で得た試料を対象に,「テーマ1: 海底洞窟の変遷と生物群集の消長」と「テーマ3: 化石群の年代決定」についてデータ収集を行った。 「テーマ1: 海底洞窟の変遷と生物群集の消長」では,南大東島の海底洞窟化石群の全容解明に向け,印像化石のキャスティングと走査型電子顕微鏡観察等を行った。その重要な結果の一つは,海底洞窟奥部の堆積物から産するやや小型のPluviostilla は「現生」のアマダレガイと同種であるとの結論に達したことである。フィリピン・ルソン島北部の後期中新統カバガン層は,現世の海底洞窟生物群集に比較できる太平洋域最古の化石群を産するが,課題採択前の調査で得たサンプルがフィリピンにおける新型コロナウィルス拡大によりマニラに取り置かれたままであった。これを国立科学博物館筑波研究施設に輸入して化石群の検討を進めた結果,ツキヨミガイは現生種と同じであること,Neritopsisは南大東島から得られている種類と同種で,かつ未記載の絶滅種であることなどの成果が得られた。 「テーマ3: 化石群の年代決定」では,海底洞窟堆積物の年代決定のために幾つかの手法で微化石の抽出と鑑定を試みた。しかし微化石は全く抽出できず,またMicro-CT復元及び岩石薄片に基づく底生有孔虫の検討では鍵となる種を見出すことができなかった。今後採取する試料から微化石抽出を継続して試みるいっぽう,年代測定に耐える,再結晶していない試料を得ることに注力する。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的達成には現地調査が不可欠であるため,新型コロナウィルスに関連する状況が改善され次第,速やかに南大東島・北大東島・沖縄本島での調査を実施できるよう,関係機関・自治体等と調整を行った。1年遅れとはなってしまったが,次年度の5月中旬に行うことができる見通しである。 この調査において,南大東島では化石含有部を徹底的に採集するとともに,海底洞窟堆積物の下部から上部にかけての連続的な試料を採取し,化石群の全容解明と古環境の解析に着手する。これにより,化石群の消長を議論するための手かがりを得る。そして,11月ないし3月に南大東島で次年度分の追加調査を行い,不足する,あるいは補強の必要があるデータを得るための調査と試料収集を行う。 5月の南大東島調査に続けて,北大東島ならびに沖縄本島において新規なる海底洞窟化石群の探索を行なうほか,海外渡航の規制が緩和され次第,フィリピン・セブ島を訪問して新規化石群を探索する。これらの地域で新たに海底洞窟化石群が見出された場合は,11月あるいは3月に北大東島と沖縄本島にて試料収集と地質調査を行う。 これらの試料をもとに,「テーマ1: 海底洞窟の変遷と生物群集の消長」,「テーマ2: 新規なる現地性群集の探索」そして「テーマ3: 化石群の年代決定」について,計画通り研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス対策のため離島への渡航には制限がかかり,また天候の影響を受けずに調査を行うことができる時期は限られることから,現地調査を次年度に延期せざるを得なかった。次年度使用額は,これらの実施できなかった南大東島・北大東島,そして沖縄本島での現地調査に係る費用であり,次年度の5月中旬に実施するべく関係先との調整を行なった結果,実施できる見通しが得られている。 なお,2年目の計画にある南大東島・北大東島,そして沖縄本島での現地調査は11月あるいは2023年の3月に行う計画とし,新型コロナウィルス対策に関係する海外への渡航制限が緩和され次第,フィリピン・セブ島において現地調査を行う。
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