本申請研究では,超音波ガイド波計測における重要かつ未解明な配管減肉の減肉深さの定量を人工知能(AI)によって実現できるか?に解を与えることを目的として,新たな2つの新規着眼点をもって研究を実施してきた。一つは多周波数のガイド波の反射率をAIの入力に用いることである。これまで多くの波動パラメータをAIに与える方法が示されてきたが,実機の減肉量の定量はできていない状況であった。本研究では多周波数のガイド波の反射率には,減肉量の情報が含まれることを間接的に証明し,結果としてAIでの減肉定量に成功している。他方の着眼点は教師ありAIにおける大量の学習データの収集方法の新たな方法の提案である。これまでの多くの方法では,学習データの収集にシミュレータを用いており,数千程度以上の学習データの収集は残念ながら困難であった。本研究では独自の数学モデルで反射波形を求める手法を提案して,数万程度以上の学習データの収集を可能としている。この大量の学習データを用いることで高い推定率を獲得できている。 21個の人工減肉を作成した配管に対して,多層パーセプトロンを用いた分類スキームを適用した結果。減肉分類幅0.5mmにおいて許容幅0.5mmにおける正答率は93%,減肉分類幅0.25mmにおいて許容幅0.5mmにおける正答率は89%であることを示せた。 さらに化学プラントの実機配管に発生した6つの減肉の推定においては,減肉分類幅0.5mmにおいて許容幅0.5mmにおける正答率は100%,減肉分類幅0.25mmにおいて許容幅0.5mmにおける正答率においても100%であることを示せた。 本手法が実機の配管減肉においても高い正答率を示せたことで次期の科研費研究基盤(C)へ繋ぐことができている。加えてIF=7の論文(Structural Health Monitoring誌)が2024年5月時点でアクセプトされている。
|