研究課題/領域番号 |
21K03751
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
黄木 景二 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70281194)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CFRP / 層間はく離 / 穿孔加工 / 電気インピーダンス / FBGセンサ / 層間強化 |
研究実績の概要 |
令和3年度の研究目標は,in-situ穿孔モニタリングシステムを構築し,層間はく離検知のフィージビリティスタディを行うことである。まずハードウェアとして,ドリル刃を固定し,Zステージ上の治具が上昇することにより一定送り速度で穿孔加工が行われる装置を構築した。本装置を用いて以下の測定を行った:①FBGセンサをCFRPに埋め込み,穿孔加工中のCFRPの内部ひずみを測定した。②穿孔中のFBGセンサの温度補償用にK熱電対をCFRP表裏面に接着し,加工中の温度を測定した。③バックアップボード(CFRP下面の当て板)に貼ったひずみゲージの値(スラストひずみ)と別途押し込み試験で測定した,スラスト力ースラストひずみ校正線図を作成し,スラスト力の推定を可能とした。④電気インピーダンスの大きさと位相角については,CFRPサンプルの上下面に導電性接着剤に形成したリング状電極にLCRメータ(f = 1 kHz)を用いて測定した。 以上の測定システムを用いて,層間強化でない通常タイプのCFRP擬似等方性積層板を用いて,層間はく離が比較的大きい場合と,小さい場合について,各信号を調べた結果,層間はく離が大きい場合のみ,スラスト力最大値点近傍で,電気インピーダンスの明瞭な変化が見られ,プッシュアウト層間はく離の発生時点を検知できた。また推定されたスラスト力(臨界スラスト力)を破壊力学モデルから計算される値と比較したところ概ね一致した。 以上の成果について,令和3年度内に1件の学会発表を行った。また本研究に関連して穿孔加工,せん断加工に関する研究論文を2報国際誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点の令和3年度の目標であるin-situ穿孔モニタリングシステムの構築を達成しており,計画通り順調に研究が進捗している。ただし,現状では層間はく離(デラミネーションファクタ)が比較的大きい場合についてはプッシュアウト層間はく離を検知できているものの,層間はく離が小さい場合は検知できていない。 この原因を究明するために,穿孔加工中の穿孔まわりの断面の損傷進展状態を観察し,電気インピーダンス信号と比較したところ,穿孔径以下の層間はく離が発生しても表裏面のリング状電極間の導電パスに及ぼす影響が小さいことが原因であると推定された。そのため,電極形状の最適化が必要であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
小さな層間はく離を検知するための電極形状として,リング上ではなく,円形電極の採用を検討している。これにより,穿孔径以下の層間はく離が発生すれば,表裏面の電極の導電パスを切断することになるため,プッシュアウト層間はく離発生時に電気インピーダンスの変化が捕捉できると予想している。 さらに,FBGセンサを層間はく離が発生する層間に配置すれば,層間はく離を検知できる可能性は高くなるため,これもトライする。
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