CFRP積層板の穿孔加工損傷として,圧縮残留強度低下に影響を及ぼす層間はく離のうち,ドリル刃出口側のpush-out delamination(POD)に着目し,そのリアルタイムモニタリングを試みた。PODに最も寄与する加工力として,ドリル軸方向のスラスト力のみを考慮した。加工中のスラスト力は変動するため,PODが発生する臨界スラスト力を知るために,CFRP擬似等方性積層板に埋め込んだFBGセンサと治具のひずみによって穿孔周りの内部ひずみとスラスト力をモニタするとともに,CFRP上下表面に電極を設置し,穿孔中の電気インピーダンス変化をリアルタイム測定した。電極は上面/下面ともに円環のring/ring電極と下面だけ円形のring/circle電極の2種類を用いた。ring/ring電極では,PODが大きい場合,POD発生に伴い,インピーダンスの大きさ,位相角ともに明瞭に変化するが,PODが小さい場合,インピーダンスはあまり敏感に変化しなかった.一方,ring/circle電極を用いることにより,PODが小さい場合でもインピーダンス変化からPOD発生を検出できた.PODが大きい場合,スラスト力が最大となる瞬間にPODが発生するが,PODが小さい場合,必ずしもそうではなかった.このような場合,スラスト力とインピーダンス変化の信号を併せることで,POD発生を精度よく検出できた.また,穿孔加工中のインピーダンス変化の要因として,①CFRP被加工物(ワーク)の材料除去,②加工力によるワークの変形(ピエゾ抵抗効果),③加工損傷,を考慮することにより,RC直並列回路モデルを用いて,インピーダンス変化を定性的に説明できた。なお,層間強化タイプのCFRP積層板では加工時の層間樹脂層の軟化により,定量的な評価が容易ではなかった。
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