近年,トポロジー構造最適化した複雑な繊維強化プラスチック(FRP)桁構造物が3Dプリンタによって成形され自転車等に実装される例や人工衛星のラティス構造体の実用等,桁構造がFRP構造物のより高比強度化に寄与している.桁構造体では多軸荷重状態は想定されないため,桁接合面のはく離挙動は未解明であった.本研究では,軽量・高強度化に優れる一方向複合材料(UD)を用いた桁構造体の健全性評価を可能とする多軸荷重状態での桁接合強度評価法を提案する.十字型UD桁試験片に曲げ負荷および面内せん断負荷を与えることにより,接合部の曲げ負荷下はく離挙動や面内2次元せん断型はく離挙動を呈する試験法を確立し,その場観察による損傷の定量化および結合力要素を用いた損傷進展シミュレーションを併用することにより,桁接合部のはく離挙動を解明することを目的とした. 2023年度は,これまでに開発した面内せん断型はく離挙動の評価用試験法にて,より一般的な2種類の鋭角に接合された接合部を有する試験片を用いてモードIII型はく離試験を実施し,同様の数値解析を実施することで,本評価手法の妥当性を向上させるとともに,軽量高強度な桁構造物のCAE設計手法として本手法を確立すべく,研究を進めた.さらに,天然繊維強化複合材料(Flax/PP)のUD材に加え,母材を変えたFlax/Epoxy材と,強化繊維を変更したCFRPのUD材についても同様の鋭角接合部材を作成しはく離試験を実施することで,本試験法の有効性を示した.最後に本手法で同定した結合力パラメーターを津波避難シェルターの変形解析に適用し,はく離挙動を含む荷重-変位関係を予測した.
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