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2021 年度 実施状況報告書

異相金属材料による微粒子複合コーティングの耐水素侵入特性の実験的検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K03763
研究機関佐世保工業高等専門学校

研究代表者

西口 廣志  佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00580862)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード水素脆化 / コーティング
研究実績の概要

Ni/Fe合金電気めっきをS25C鋼に施し、100MPa, 270℃高温高圧暴露チャージにおける水素侵入特性について調査してきた。めっきがマルテンサイト単相となる Ni=10%,混合相となる Ni=30%、 ニッケル単相となる Ni=60%の TDA プロファイルによると、Ni=30%ではコーティング有と未コーティングとで水素侵入量に差があり、めっきによって水素侵入が62%防止できていた。一方、Ni=10%とNi=60%ではコーティング有と未コーティングとで水素侵入量に大きな差がなく、水素侵入が妨げられていないことが分かった。

また、試験片に角部があるとメッキの剥離や割れが起こりやすかったので、母材であるS25C鋼試験片の形状を角柱状試験片から円柱状試験片に変更した。剥離や割れはニッケルの割合が小さいほど多く見られていたが、この方法により、どのニッケル割合においても剥離や割れがほとんど見られなくなった。また、銅板にニッケル割合40%でめっきを施し、さらに添加物(サッカリン)を導入したところ、応力集中が起きる端面においても剥離や割れが生じなくなることが分かった。この方法により添加物の量や電流密度、成膜時間を調整することで膜厚は変化させずにき裂を無くすことができた。

また、大型水素発生装置の隣に圧力サイクル疲労試験機(1MPa未満)を導入した。これにより、配管の内部にメッキを施し、圧力を変動させて疲労試験を行うことで、実環境に近い形での強度調査ができる。具体的にはメッキ部において水素が侵入した場合の配管内半径部の周方向応力を変化させ、膜中のき裂発生箇所、き裂進展特性、さらに母材の強度特性に及ぼす膜の影響などを調査することができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Ni/Fe合金メッキにおいて水素侵入防止率62%を達成した。
鋼中水素侵入量が62%低下した場合、ジーベルツ則に基づいた試算を行うと低圧水素ガス中でのき裂進展加速率は2倍まで減少する。これは水素脆化を起こしにくい材料とされるオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lの高圧水素ガス中疲労き裂進展の加速値2倍と同じ値である。製膜により母材中への水素侵入量を62%以上抑えることができれば、高コストなSUS316Lの代わりに低コスト材を用いてもき裂進展加速率は変わらないことになる。この製膜技術により例えば水素ステーションで使用される圧縮機、蓄圧器、プレクーラー、ディスペンサ、その他機器などの材料に適用すると材料費・製品代が1/10になり、約62%に相当する1.71億円の価格カットが期待される(経済産業省 水素・燃料電池戦略ロードマップの試算コストを用いて計算)
スパッタリングを用いた場合はZn, Alメッキにおいては20%程度しか水素侵入防止率を達成できなかったが、他の合金メッキ条件においても調査することで水素侵入防止の要因を明らかにする必要があるが、格子定数などの違いなど要因の可能性を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

2022年度においては他の合金条件においても水素侵入防止率の影響を調査したい。
また、配管にメッキを施し、圧力サイクル疲労を行う。応力比はR=0で、圧力条件は最大0.7MPaの場合、100MPaの場合の2通りで行う。内径は同じで、外径が異なる配管5種類を並列で実施することで応力条件が5種類の状態で同時データ取得をすることができる。
また、添加物などを入れることでどのように割れを抑えることができるかの調査も実施する。

次年度使用額が生じた理由

本年度大分高専と共同研究を実施できることとなり、購入が不要となったものが生じた。具体的にはEBSD装置やその解析に伴う高精度研磨機などである。これらは大分高専で所有しているので、本校において導入する必要がなくなった。そのため、本研究を実用化するにあたって重要であり、かつ他の教育機関で所有することが稀である圧力サイクル疲労試験機とその周辺装置を、他の助成金と連動させながら導入した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Preparation of functional thin films with elemental gradient by sputtering with mixed powder targets2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroharu Kawasaki, Tamiko OHSHIMA, Yoshihito YAGYU, Takeshi Ihara, Kazuhiko Mitsuhashi, Hiroshi Nishiguchi, Yoshiaki Suda
    • 雑誌名

      Jpn. J. Appl. Phys

      巻: 61 ページ: 1-4

    • DOI

      10.35848/1347-4065/ac1488

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Hydrogen Entry State of Coating Material Using Sputtering Method2022

    • 著者名/発表者名
      Yuya Muramoto, Hiroshi Nishiguchi, Ohshima Tamiko and Kawasaki Hiroharu
    • 学会等名
      ISPlasma2022/IC-PLANTS2022
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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