研究課題/領域番号 |
21K03765
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 航圭 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60619815)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粘着現象 / はく離強度 |
研究実績の概要 |
本研究では,力と変形量の関係に基づく材料力学的な観点から,粘着テープの粘着界面におけるはく離メカニズムを明らかにし,それに基づく汎用的かつ簡便なはく離強度評価指標の確立を目的とする.はく離力が,粘着剤層と被着体の間の界面力,粘着剤層の伸縮,テープ基材の曲げ変形に起因する点に着目し,はく離力におけるこれらの寄与を個別に評価する独自手法に取り組む. これまでに,粘着剤層で消費されたはく離エネルギーと粘着剤層のひずみ速度に着目して実験を行った.テープ材料・テープ厚さ・はく離速度・はく離角度を変えたピール試験とプローブタック試験を行い,両者の関係を調べた.結果,ピール試験,プローブタック試験ともに定常的な界面はく離を示し、ひずみ速度が0.01から100 1/sの広い範囲で,それぞれから得たはく離エネルギーとひずみ速度の関係は同等となり,両対数軸上における直線関係を見出すことができた. この直線関係は,既往の研究成果から粘弾性のべき乗則に基づく結果であることを確認し,はく離過程における粘着剤層の伸縮過程と関連付けることができた.また,粘着剤層が薄い場合には,はく離界面でキャビティが生じやすく,これによってはく離に要する外部仕事が小さくなることも明らかとなった.今後は,はく離過程におけるキャビティの発生有無をはく離領域における粘着剤層内の応力分布と関連付け,破壊力学的な観点から粘着界面のはく離現象にアプローチする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初は,初年度に「粘着テープの模擬サンプルを用いたはく離力の内訳定量化」を予定していた.模擬サンプルとして,界面力を表すマグネットシート,粘着剤層を表すシリコンゲル,基材を表すPETフィルムを用意し,マグネットシートのピール試験による界面力測定,マグネットシートにPETフィルムを貼付したサンプルのピール試験によるテープ基材にk起因したはく離力の内訳算出,マグネットシートとPETフィルムの間にシリコンゲルを挟み込んだサンプルのピール試験による粘弾性体の伸縮に起因したはく離力の内訳算出,について予備実験を行ったが,適切な材料に苦慮している.そこで,2年目以降に予定していた実際の粘着テープによるピール試験,プローブタック試験を先に行い,「研究実績の概要」に示したように,計画していた通りの結果を得ることが出来た.したがって,今年度は模擬サンプルによるはく離仕事の内訳算出に取り組んでいく.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果として,はく離仕事に着目したエネルギー的な観点による粘着テープのはく離現象の評価手法を確立しつつある.今後は,これを破壊力学的なアプローチと結び付けるため,はく離領域における応力分布に着目した評価方法に取り組む.ピール試験のはく離領域における応力分布を測定する装置を開発し,マイクロスコープによるはく離領域の観察結果との比較からはく離先端部における応力分布とはく離形状を結び付ける.これにより,粘着剤層が薄い場合にキャビティが生じやすくなる原因を究明し,はく離エネルギーとの関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の出張旅費に当てる予定であったが、オンライン開催に変更となり旅費が不要となったため。
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