本研究は,軽量,高強度かつ力に対する感知機能を有する磁歪複合材料製のネジの開発を目的に,磁歪複合材料製ネジの感知・締結特性を理論的・実験的に解明するものである.また,感知・締結特性だけでなく,振動・衝撃による発電特性についても検討し,大量に配置することを前提とした,多機能なネジ型デバイスの設計理論・技術の確立も目指すものである. そこで,R5年度は以下の2項目に関して研究を行った.①磁歪複合材料製ネジの作製において,予め磁歪繊維にねじりを加えることによる特性向上についての検討.②磁歪材料を用いたワッシャーの作製および通常のネジの締結試験に使用してのネジ外部からの軸力変化の計測. 項目①に関して,磁歪複合材料製ネジの作製に際して,磁歪繊維にねじりを加えたまま固めることにより,せん断の予荷重を加えたまま作製した.作製した磁歪複合材料製ネジに対して軸方向ひずみの変化を計測し,ねじりによる感知特性について検討した.項目②に関して,一般的によく使われている寸法のワッシャーを鉄コバルトを用いて作製し,通常のネジの締結試験に使用して,軸力と磁束密度変化の関係を評価した.この時,ネジに負荷するバイアス磁場および磁場検出用のホール素子の角度を変えた試験も行い,バイアス磁場および計測位置と磁束密度変化の関係についても調べ,感知特性について検討した.また,上記については有限要素解析および理論計算を行い,実験結果と比較した. R5年度は以上の通り研究を実施し,研究期間全体としては以下の知見を得ている.①磁歪複合材料製ネジにおいて,作製時に引張りもしくはねじりの予荷重を負荷,あるいは磁場を印加により,特性が向上する.また,締結時の外部磁場でも感知特性が向上し,作製時の条件と合わせて最適な条件が存在する.②磁歪材料製ワッシャーによりネジ外部から軸力評価が可能であること,の知見を得た.
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