耐熱構造材料では,熱伝導率の低減が内部熱応力を上昇させて損傷の加速や寿命低下を引き起こすため“高い熱伝導率”により“熱応力を抑制”することが善とされてきた.しかし,先進ガスタービンで不可欠となっている遮熱コーティングにおいては,低熱伝導率と内部熱応力の抑制の両立が求められる.本研究では,従来トレードオフの関係にある低熱伝導率化と内部熱応力の抑制の両立が可能かという命題に対して,遮熱コーティングを事例として取り上げ,新規開発した遮熱コーティングの遮熱性・耐久性を検討した. 具体的には,YSZより低熱伝導率性を有するYbTa3O9を遮熱層とし,中間層としてHf6Ta2O17を用いたTBCについて検討した.しかし,成膜した新規遮熱コーティングの耐熱サイクル性を評価したところ,従来TBCに比して剥離抵抗が大きく低下することが明らかとなった.これは中間層である Hf6Ta2O17層の熱応力緩和が不十分で,界面に過大な熱応力が生じたことが原因と考えられた.そこで,熱応力緩和機能を十分に発現し得る組織として,遮熱層はYbTa3O9のままとして中間層に柱状YSZ層を有する遮熱コーティング(Yb/YSZ材と呼ぶ)を準備した.そして,その耐熱サイクル性を検討した結果,従来TBCを凌駕し,Yb/Hf材に比べてYb/YSZ材が耐熱サイクル性に優れることを明らかにした.また,中間層とした柱状YSZ層の熱応力緩和性について,高エネルギーX線を用いた応力測定により確認した.更なる熱応力緩和機能を発現させるため,中間層に柱状YSZ層を成膜したのち,そのYSZ層上にさらに柱状YbTa3O9層を有する遮熱コーティング(柱状Yb/YSZ材と呼ぶ)の可能性について検討した.その結果,柱状Yb/YSZ材が耐熱サイクル性がさらに向上することを実験的に明らかにするとともに,数値解析によりその要因を明らかにした.
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