研究課題/領域番号 |
21K03770
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石井 陽介 京都大学, 工学研究科, 助教 (70781706)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非線形超音波法 / 非破壊評価 / 異方性材料 |
研究実績の概要 |
本研究では,異方性材料の新しい超音波非破壊評価のための,非線形三波相互作用の解明を目的としている. 本年度は,異方性材料における非線形三波相互作用の共鳴条件に関して理論的検討を行った.これは,材料非線形性を有する異方性材料中で二つの基本波を交差させたときに和・差周波数成分の第三波が発生するための必要条件であり,具体的には二つの基本波の波数ベクトルの和または差が第三波の波数ベクトルに等しくなるような条件である.等方性材料の場合は波数が伝搬方向に独立でありほぼ自明的に求められるのに対して,異方性材料の場合は波数が一般に伝搬方向依存性をもち,それを簡単には求めることはできない.そこで,動弾性方程式に対して平面調和波解を仮定することで得られるChristoffel方程式を解くことで,立方晶材料中を伝搬する準縦波および準横波の波数ベクトルを解析的に求め,共鳴条件が満足されるような基本波伝搬方向や基本波周波数を検討した. 本解析は,先行研究で対象とされている等方性材料中の非線形三波相互作用を特別な場合として含むものである.この場合に先行研究で得られている共鳴条件と整合する結果を得たことにより,本解析の妥当性を確認した.また,共鳴条件に及ぼす基本波伝搬方向の影響に関して,等方性材料の場合は二つの基本波の交差角度だけに依存するのに対して,異方性材料の場合は各基本波の伝搬方向に複雑に依存することが明らかとなった.異方性材料では一般に位相とエネルギーの伝搬方向が異なるため,非線形三波相互作用の数値シミュレーションや実験を行う際は,上記の共鳴条件に加えて所望の位置で二つの基本波を交差させるための検討が必要である.そこで立方晶材料中の準縦波・準横波の群速度を理論的に導出したうえで,材料中で非線形三波相互作用が達成されるような基本波励起条件についても検討を行い,その妥当性を数値解析により検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は異方性材料中の非線形三波相互作用に関する理論的検討と,非線形三波相互作用の数値的検討の前段階としての線形波動伝搬シミュレーションを行う計画であった.理論解析では,第三波発生のための共鳴条件の導出を行い,その基本波伝搬方向や基本波周波数依存性を明らかにした.加えて,理論的に求めた位相速度や群速度の数値解析による妥当性検証もできた.これらの点は当初の計画通り進展したと言える.一方で,当初の計画に含まれていた非線形相互作用が生じるための十分条件に関する理論的検討はできておらず,この点は次年度に行う予定である. 以上のように,次年度への課題が一部残ってはいるものの,当初計画していた研究がおおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,今年度に実施した数値解析に材料非線形性(応力―ひずみ関係の弱い非線形性)を組み込むことで,立方晶材料中の非線形三波相互作用の直接的な数値シミュレーションを実施し,理論的に求めた共鳴条件の妥当性を検証する.それと並行して,非線形三波相互作用のための十分条件に関する理論的検討を行う.ひずみエネルギーにおいてひずみの三次の項まで考慮し,弱非線形性の仮定の下で摂動解析を実施することで,基本波と第三波それぞれの伝搬を支配する線形化方程式を導出する.それらを逐次的に解くことで第三波の変位場を求め,非線形三波相互作用に及ぼす基本波伝搬方向や基本波周波数の影響を検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた出張がなくなったことに加え,購入予定であった理論解析用の数式処理ソフトウェアのライセンスを購入する必要がなくなったため,次年度使用額が生じた.これは、次年度分の助成金と合わせて数値解析用の高性能計算機(ワークステーションまたはGPUアクセラレータ)の購入に充てる予定である.
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