研究課題/領域番号 |
21K03780
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西川 出 大阪工業大学, 工学部, 教授 (90189267)
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研究分担者 |
高橋 英和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90175430)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コンポジットレジン / 摩耗特性 / 疲労強度 / フィラー / 粒径 / pH |
研究実績の概要 |
本年度は歯科用コンポジットレジンの特性向上のための基礎研究を行った。重点とした特性は摩耗特性と疲労特性の2点である。まず、疲労強度に及ぼすフィラー粒径の影響について調査するため、粒径の異なる3種類のフィラーの配合割合を変えてレジンと配合した。10μm, 3.5μm, 0.7μmの3種類のフィラーをそれぞれ1種類ずつ多く配合して疲労強度を比較した場合、一番粒径の小さい0.7μmのフィラーを多く配合したコンポジットレジンが最も疲労強度が向上することがわかった、10μm, 3.5μm, 0.7μmの3種類のフィラーをそれぞれ1種類ずつ極端に少なく配合して疲労強度を比較した場合、組み合わせるフィラーの粒径は小さくすればするほど疲労強度が向上することがわかった。粒径の異なる3種類のフィラーを配合したコンポジットレジンの疲労強度は、小さな粒径のフィラーを多く配合するほど疲労強度が向上することがわかった。これはコンポジットレジンの単位長さあたりのフィラー粒子数が増えることによって、き裂の進展速度を抑制できたためと考えられた。 次に、摩耗性に及ぼす環境の影響についても調査した。配合割合や充填率を変更し、酸に浸したものとそうでないものを用意して摩耗試験を行い、phによるコンポジットレジンへの影響について検討した。その結果、粒形の大きなフィラーを配合したコンポジットレジンは摩耗性にも優れて酸の影響も受けにくいことがわかった。また粒形の小さなフィラーを多く含んだコンポジットレジンは摩耗性が劣り、酸の影響もより受けやすいことがわかった。一方、充填率を上げれば摩耗量は押さえられ、粒形の大きなフィラーを多く含んだコンポジットレジンは摩耗性に優れ、酸にも強い結果となった。これに対して粒形の小さいフィラーを多く含んだコンポジットレジンは摩耗性が劣り、酸の影響も受けやすい結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目と2年目はコンポジットレジンの特性向上に対する基礎研究に軸足を置いているので、おおむね順調に研究は進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
さらに添加するフィラーサイズのバリエーションを増やして強度、摩耗性に対して安定で高い特性を有するコンポジットレジンを開発すべく、疲労強度特性、摩耗特性向上に対する主たる影響因子を抽出し、これらによる影響度調査を行う。あわせて強度特性を微視的にも解明するためのツールとして微視的デジタル画像相関法の開発も引き続き行い、これを用いたコンポジットレジン強度向上メカニズムの解明を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍、半導体不足により、予定していた疲労試験機制御装置の入手が困難になったことが影響している。使用計画は次のとおりである。開発したコンポジットレジンの疲労強度を調査するための疲労試験制御に使用するコントローラを購入し、高度な疲労試験を実現させる予定である。
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