研究課題/領域番号 |
21K03791
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
清水 浩貴 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50323043)
|
研究分担者 |
田丸 雄摩 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (30284590)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 平面形状測定 / 多点法形状計測 / 誤差分離 / MEMS |
研究実績の概要 |
本研究は3×3点の変位を同時計測可能なセンサアレイ開発し,これを走査することにより得られる冗長度の高いデータの新たな接続法と組み合わせることでステージの運動誤差の影響を受けないオンマシン平面形状測定法の確立を目指すものである. 2021年度は新型ウイルスの影響で利用している半導体加工設備が長期にわたり運用停止されたため, 6点重ね合わせによるデータ接続法の検討と,モンテカルロシミュレーションによる精度検証を行った. 3×3配置のセンサアレイを用いた場合,3組の独立した3点法測定データが縦方向と横方向の両方で得られ,大型鏡面を必要とする外部からの姿勢測定無しに平面形状の再現が可能である.一方,この方法では各センサに入る偶然誤差の影響を受けやすい問題がある.そこで,3×3配置センサアレイのデータの冗長度を利用し,センサユニットを横に1列ずらした際の2×3点の重ね合わせからデータ接続(ステージ運動誤差の補正)を行う方法を検討した.その結果,9つのセンサ出力の組み合わせを適切に選ぶことで,並進運動誤差については4つ,ピッチング誤差については6つ,ローリング誤差については3つの独立した解がそれぞれ求められ,平均をとって精度を改善できることを示した.この結果に基づきモンテカルロシミュレーションを行い,一例として11点×11点の測定点で検討した場合,各運動誤差に冗長データから求めた平均値を採用することで形状誤差が最大となる点でのばらつきを1/14程度,測定領域全体の誤差の累積量を1/6程度に軽減できることを示した. また,3点法を応用した3×3配置でも各センサの原点高さの不揃いが累積し,形状の誤差となるゼロ点誤差が生ずる.この対策としてX方向,Y方向,XY平面内対角方向の3方向姿勢変化を外部の角度センサでモニタリングすることにより原点高さ不揃い量を求めて補正しうることも確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型ウイルス感染症蔓延防止のため,本研究課題遂行に利用していた半導体加工設備(北九州産業学術推進機構 共同研究開発センター)が利用希望時期に休止し,再開後も予約が集中したためデバイスの試作による基本原理の確認,ならびにプロセスの変更については主に来年度以降に繰り延べる変更を行った.この面では進捗に遅れが生じている. その代替として,3×3配置センサのデータ接続法の検討,および,モンテカルロシミュレーション実施に関しては前倒し実施し,成果報告に挙げた結果を得た.さらに,9つのセンサの原点位置ずれによる影響もシミュレーションプログラムに組み入れ,誤差の傾向を確認したのち,X方向,Y方向,XY平面内対角方向の3方向姿勢変化を外部の角度センサでモニタリングすることにより補正できる可能があることも確認した.原理検討および計測シミュレーションの面においては予定以上の進捗状況にある. 新たなデバイスの構造検討については,関連して1つの梁で複数点の変位を同時取得する手法についてシミュレーションおよび実験により検討を行い,この手法が成立する見込みを得たが,研究の進捗を考慮し,デバイス試作がより容易となる単独検出構造を3×3に配置する構造を先に製作する方向で検討をすすめた.単独の変位検出構造としては固定フレーム内側に変位を検出する十字の柔軟梁を固定する形式と,矩形の固定フレーム内にダイヤフラム構造をつくり変位を検出する形式の2形式を最初に試作することとした.
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は2021年度に実施できなかったデバイスの試作を中心に研究課題を遂行する.新たに検討した構造では,変形しない固定フレームと,測定対象物の凹凸に応じて変形する薄く柔軟な十字梁構造またはダイヤフラム構造,さらに機械加工面計測に対応する探針を融合する必要がある.また,変位を高い分解能で測定するために,プロセスの条件を見直しひずみ検出部のピエゾ抵抗体の感度を向上する必要がある.このため2022年5月より東北大学に長期滞在し,高度なMEMSデバイス製作技術を有するマイクロ・ナノマシニング研究教育センターにて設計・製作技術を習得し,3×3センサアレイデバイスの試作を行う.併せて,デバイス評価技術についても習得する. データ接続法については2×3または3×2の6点重ね合わせ法をベースに,単純な縦横の接続だけでなく,縦と横を組み合わせる複数の経路でデータ接続を行い,その結果を平均する手法についてシミュレーションにより検討する.また,2021年度に考案したゼロ点誤差推定法は前の点の原点ずれ量をもとに次の点の値を順次求める方法であり,後になるほど偶然誤差の影響を受けやすい問題が残る.この点についても改善策を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型ウイルス感染症蔓延防止のため,本研究課題遂行に利用していた半導体加工設備(北九州産業学術推進機構 共同研究開発センター)が利用希望時期に休止し,再開後も予約が集中したためデバイスの試作を繰り下げ,関連した物品費および施設利用料が小さくなったため次年度使用額が生じた. 2022年度は東北大学に滞在してデバイス試作を行うため,繰越金額は当該年度分とあわせマイクロ・ナノマシニング研究教育センターの設備利用料並びに関連消耗品の購入に使用する.
|