研究課題/領域番号 |
21K03795
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
寺野 元規 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (90708554)
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研究分担者 |
竹村 明洋 岡山理科大学, 工学部, 講師 (50611878)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バニシング加工 / 結晶組織制御 / 傾斜機能材料 / 材料加工 / 生産工学 |
研究実績の概要 |
傾斜機能材料の開発を目指し,バニシング加工により,【1】局所的な結晶粒微細化,および,【2】局所的な合金化を実施した. 【1】では,変形解析ソフト(Simufact Forming)によるCAE解析結果を基に,素材を直径20mm(旋削仕上げ)の純鉄,工具を先端半径3mm,加工条件を周速100m/min・送り速度0.2mm/rev.にて,CNC旋盤を用いてバニシング加工を行った.加工回数は1, 5, 10回であり,加工荷重は70, 140, 220Nである.加工後の表面粗さ,残留応力測定,断面組織観察の結果から,バニシング加工により,せん断ひずみが導入され,加工硬化(ひずみ硬化)が生じていることを確認した.また,加工回数を増やす,もしくは,加工荷重を大きくしても,表層の加工効果が飽和し,未加工硬化部である内部にひずみが伝搬することを確認した.また,CAE解析結果(加工回数1回,加工荷重220N)より,中心から外周部に向かうほどひずみ,および,ひずみ勾配は大きくなり,外周部で最大相当塑性ひずみは0.81となっていることがわかった.ひずみ導入深さは解析で0.46mm,実験(断面観察結果)では,ひずみ導入深さは0.5mm程度と判断でき,外周部ほど材料流動が大きくなっており,解析結果とも対応していた. 【2】では,2021年度の結果を考慮し,700℃までバニシング加工可能な加熱板を新たに設計・製作した.700℃でのバニシング加工実験後に試験片断面のEDXによる定性分析を行った結果,Niのピークが検出された.元素マッピングにより詳細に検討した結果,Fe元素とNi元素の重複はわずかであり,合金化されている可能性は低い.これは,加熱中に試験片表面が酸化膜で覆われしまい,酸化膜の上から加工したためと推察した.つまり,昨年度実施した400℃での実験の方が合金化には適していると判断できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【1】局所的な結晶粒微細化について,CNC旋盤を用いて,各種条件にてバニシングを実施した.その後,断面組織を観察し,せん断ひずみの導入,CAE解析結果の検証を行った(当初予定の2023年度研究実施計画の事項).また,熱処理による静的再結晶実験(当初予定の2024年度研究実施計画の事項)も一部ではあるが実施し,表層のみ結晶粒微細化に成功した. 【2】局所的な合金化について,700℃でのバニシング加工実験を行ったが,合金化している可能性は低かった.加熱中の酸化膜の影響と判断でき,より低温もしくは非酸化雰囲気でのバニシング加工が必要であることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
【1】局所的な結晶粒微細化について,熱処理のよる静的再結晶実験を進める.また,CAE解析においては,複数回バニシング加工した際の解析を進め,ひずみ分布を調査する. 【2】局所的な合金化について,これまでに室温・400℃・700℃にて実験を行った.700℃での合金化の可能性が低く,400℃では合金化の可能性があることから,中間温度での実験を進める.
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