研究課題/領域番号 |
21K03800
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
吉冨 健一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (40546149)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高能率研磨 / 水膜チャック / スラリ / 高平坦化 / 半導体デバイス / 高回転高圧研磨 |
研究実績の概要 |
スラリの精密パルス供給研磨システムの構築のための要素技術として、①新しいウエハ保持原理を採用したチャック開発と②工具高速回転時のスラリ拡散状態の評価方法に関する研究を行った。成果について以下に示す。 ①高回転高圧研磨時には、加工熱の発生量が大きくなるためにウエハ温度が上昇する。温度上昇は研磨時の化学反応を促進し研磨速度が向上する効果もあるが、過度な温度上昇は、ウエハを保持するチャック方法に影響を与える。一般的なウエハ保持方法としてワックスと水貼り法があるが、ワックスによるウエハ保持では、加工熱によりワックスが軟化するため使用温度に上限があり、スウェード素材による水貼り法にも使用温度の上限がある。さらに、両チャック法ともに保持層が軟質で厚さがあるため、ウエハ保持時に保持層の変形がウエハ表面の平坦度を悪化させる。そこで、極薄の水膜でウエハを保持する水膜チャックを開発した。開発したチャックにより、保持層の変形を極小化でき、また、加工熱で保持力の変化がないウエハ保持を可能にした。 ②高回転研磨条件(1000rpm以上)では、研磨パッドを高速回転させるために研磨パッド上に供給される大部分のスラリは遠心力により加工に寄与することなく研磨パッド外に飛散する。このため、研磨パッド上に実際に保持されるスラリ量(拡散スラリ量)を評価する必要がある。そこで、回転条件と研磨パッド表面状態に対する研磨パッド上の拡散スラリ量を測定する方法を考案した。本手法により、回転数、研磨パッドの種類、ドレッシング条件に対する拡散スラリ量とその液膜厚の推定を可能にした。さらに、表面観察画像や表面粗さ計では差がでにくい研磨パッドの表面性状を数値として評価することができる見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研磨システムの準備・開発について、①ハード設計・製作、②ソフト製作、③要素技術の検討、を進めている。進捗状況を以下に示す。 ①高速スピンドル、研磨力測定用3軸力学センサ、ウエハ用非接触厚み計を調達し、研磨システムの構成部品がほぼ揃った。また、研磨システムの母体となる3軸ステージおよび各構成部品についてPCからの動作確認を実施した。 ②研磨システムをPCから制御するためのプログラムを製作中である。プログラムは、3軸ステージ、研磨力、高速スピンドル、スラリを供給するディスペンサ、ウエハの厚みデータを制御するように設計を進めている、 ③成果報告の項目以外に、研磨パッド溝の最適設計、ドレッシング方法、温度センサ選定と設置方法、研磨シミュレーションについて研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究推進方策として、①研磨システムの構築、②チャックの製作、③基礎実験を進める。それぞれの概要および課題を以下に示す。 ①研磨システムの製作として、研磨中の研磨力、ウエハ厚み、加工温度の測定機構を設計し、試作機の完成を目指す。ソフト開発は、各データを統合して処理するプログラムを製作する。課題として、旧システムで使用していたφ50mmウエハより大きいφ100mmウエハを使用するために今までの研磨特性と異なる可能性があることが挙げられる。よって、その影響を調査し対策を講じる。 ②水膜チャック方式を採用したチャックを製作し、水膜の形成法を含めたウエハ取り付け方法を確立し、ウエハの保持特性を調査する。 ③研磨システム開発の進捗に合わせて実施可能な基礎実験(回転によるウエハおよび研磨パッドの振れ測定、スラリ供給状態の観察、ウエハ厚みの測定精度、研磨圧測定)を行う。実験結果を踏まえて、20000rpm、100kPaの高回転高圧研磨に向けた制御手順を設計する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ対策により旅費を使用しなかったため。翌年度に使用予定である。
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