研究課題/領域番号 |
21K03801
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青柳 健大 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90636044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Additive Manufacturing |
研究実績の概要 |
本研究の目的はAl合金を対象とし電子ビーム積層造形(以下、PBF-EB)プロセスにおける、溶融凝固挙動ならびにプロセス中の相変態挙動を明らかにすることである。正常な造形試験片を得るためには、溶融条件最適化に加えて、電子ビーム照射時の粉末の飛散(以下、スモーク現象)を抑制する必要がある。本年度は、溶融条件最適化手法の検証・改良に加えて、組成を振ったAl合金粉末を用いたスモーク現象の粉末組成依存性に関して調査を行った。スモーク現象の発生しやすさは粉末の組成に依存しており、そのスモーク現象の発生しやすさの傾向は粉末電気抵抗を調べることで把握でき、電気抵抗が大きい粉末ほどスモーク現象が発生しやすかった。各粉末の表面構造をオージェ電子分析ならびに透過電子顕微鏡による断面観察により明らかにし、粉末電気抵抗の大きさが酸化被膜の組成と構造に依存していることが分かった。 また、Al-Fe合金のPBF-EB造形では、機械学習を用いた条件最適化手法を用いて溶融条件を最適化することで、Al-5mass%FeとAl-10mass%Feの両方で相対密度99.9%を超える欠陥レスの造形試験片を得ることができた。得られた造形試験片の組織を調べたところ、母相が積層方向に強く配向し、微細なAl-Fe化合物相が晶出した組織となっていることが分かった。Feの濃度が大きいほど、晶出物のサイズと量が共に大きくなり、ビッカース硬さも大きくなっていることが分かった。今後、組織の溶融条件依存性を調査することで組織形成挙動を解析していく予定である。 スモーク現象に関わる成果を2023年春の日本金属学会講演会で発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子ビーム積層造形における相変態挙動を解析するにあたり、まずは欠陥のない造形体を得ることが重要であり、その組織を評価することで結果の影響を排除して組織形成挙動を明らかにできる。2022年度はAl-Fe系合金の造形条件最適化を完了し、組織評価に十分なサイズの造形体を得ることに成功し、その組織評価も行った。組成による凝固組織に違いも明らかにできた。さらに高さ方向の組織の違いも評価し、造形時のその場時効熱処理による組織変化を議論するのに必要なデータがそろいつつある。 また、昨年度まで実施していたAl-10Siでは問題にならなかったスモーク現象が他のAl合金系で発生することもあり、スモーク現象を抑制する必要が生じたが、Al合金原料粉末の組成によるスモーク現象への影響を明らかにし、スモーク現象を発生させずに造形する方針を立てることもできるようになった。 上記の通りデータが十分に出ているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PBF-EB造形では、積層方向の位置によって、造形温度で保持されている温度が異なるため、高さ方向の位置の違いにより組織がどのように変化するかを解析することで、造形中のその場時効熱処理による相変態挙動を明らかにすることができる。各高さの造形温度での保持時間は、造形時の温度ログから知ることができるので、来年度は造形ログデータと組織観察結果から凝固後の晶出物の成長挙動を定量的に解析する。 また、溶融条件によって凝固時の固液界面の温度勾配と凝固速度が変化するため、組織の溶融条件依存性を調べることで、初期凝固組織の形成挙動を明らかにすることができる。そこで、溶融条件を変えた造形試料の組織を観察することで、凝固組織の凝固速度依存性を明らかにすることで、凝固挙動を解明する予定である。凝固速度の見積は、数値流体力学計算を用いたシミュレーションにより行う。
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