本研究の目的は、Al合金を対象とし、電子ビーム積層造形(以下、PBF-EB)プロセスにおける、溶融・凝固挙動ならびにプロセス中の相変態挙動を明らかにすることである。Al-10Fe合金の造形において、機械学習で最適化した条件を中心にビーム走査速度を振った試料を用意し、その組織を調査した。構成相はビーム走査速度に依存せずα-Al母相とAl13Fe4晶出物相の2相で構成されており、α-Al母相は積層方向に伸びた柱状晶であり、そのサイズもほぼ変化しなかった。一方で、Al13Fe4晶出物の晶出形態は走査速度に依存し変化しており、走査速度が大きくなるにつれ、晶出物が微細に分散していた。また、比較的大きな晶出物と微細な晶出物の2種類が観察され、前者はビーム照射時に溶融しきれなかった粉末に含まれていたAl13Fe4相が溶け残り成長したもの、後者は凝固時に晶出したものと考えられる。後者を詳しく観察すると、α-Al母相のデンドライトセル境界に晶出しているものと、多数の微細晶出物が集合しているものがある。微細晶出物の集合領域は積層方向に垂直な層状に表れており、ビーム照射で形成されるメルトプール底面近傍の固液共存領域において晶出したものと考えられる。固液共存領域近傍では溶液流れが小さく、溶質濃度が均一になりづらいため、溶質濃化領域が存在し、そこが核生成サイトになり、また、走査速度の増加に伴い冷却速度が大きくなるため過冷却が大きくなるので、微細な晶出物が集合した領域が形成されたと考えられる。また、造形材組織の高さ依存性と造形ログデータから推定される温度履歴とを解析することで粒成長挙動が説明でき、凝固後の相変態挙動を造形ログデータの温度履歴から推定できることが分かった。
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