研究課題/領域番号 |
21K03803
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
前野 智美 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80505397)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電気塑性効果 / 変形抵抗 / せん断応力 / ねじり / 水冷 |
研究実績の概要 |
当初計画に従い,丸棒試験片を水冷機能を有する電流印加ねじり試験機を構築した.R2年度までにおいては,63rpmの旋盤を用いて冷却機能を備えていなかったため,ジュール発熱だけでなく塑性発熱によって100℃程度の温度上昇があった.塑性発熱による温度上昇も低減するために,回転モータをステッピングモータとして,低回転速度で試験を実施できる構造とした.構築した試験機において9L/minの水冷を用いながら7.6a/mm^2の電流印加,5rpmの回転速度でねじり試験を実施したところ,試験片表面における温度上昇を最大2℃以内にできることを確認した. R2年度の冷却なしの実験においては,10%程度のせん断応力の低下を確認していたが,冷却機能を有する実験系においては,電流印加の有無がせん断応力に及ぼす顕著な影響は確認されなくなった.電流の途中印加,途中停止を行い,電流印加なしとそれぞれ比較したところ,印加時,停止時に微小なせん断応力の変化が確認された.しかしながら,冷却なしの実験における変化に比べわずかな差であるため,電気塑性効果として見られている変形抵抗の低下は単にジュール発熱によるものである可能性が高いことが示唆された. また.試験後の試験片の状態において,冷却なしでは平行部中央で破断したのに対し,冷却ありでは平行部端で破断が生じた.これは,冷却なしにおいては,生じる熱は棒材を伝わり棒材の把持部に伝わる.そのため把持部から遠い平行部中央の温度が最も高くなり変形が集中したためと考えられる.冷却ありでは温度は均一で変形も均一となり,形状急変部である平行部端で破断が生じたと考えられる.このことからも構築した実験系での実験は温度精度の高い実験が行えたとみられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り,冷却機能を有する実験系を構築し中実丸棒材において,温度上昇を2℃以内に抑えた検証実験が実施可能となった.また,構築した実験系ではパイプ材も用いることができ,パイプ内部から冷却できる機能を有する物とした.この場合はパイプ表面が最大温度上昇部となり,温度補償が確実に行える.また,パイプを用いることで電流経路が表面近傍に限定され,より明確な実験が可能である. 構築された実験系において,顕著な電気塑性効果が確認されなくなったが,温度上昇ではない電気塑性効果の発現の検証自体も研究目的であるから,研究進捗は順調である.
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今後の研究の推進方策 |
温度上昇の無い範囲で電流密度を増加した実験を行う.また,電極接触位置についても検討を行う.構築した実験系ではパイプ材を用いて,内部を水冷しながら実験も可能となっている.中実丸棒の実験では表面温度は測定できるが,冷却も表面からとなっており,直接冷却されていない丸棒内部の温度が不明確である.パイプ材を内部から冷却し,表面側の温度を測定すれば最大温度を保証することができ,検証がより厳密になる.アルミニウムパイプ材を用いて電流印加有無の実験を行い,電気塑性効果発現の検証をする. 電流印加が,材料組織等に及ぼす影響について検討する.試験後の機械的特性の測定および組織観察を実施する.また,転位密度について電流印加ありとなしの試験片においてXRDを用いて定性的に比較する. 電気抵抗が低く,密度の高い材料として銅を用いた実験を行う.また結晶構造の異なる材料としてチタンの丸棒材を採用して同様の実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系を構築するために必要な部品について,中古部品,ロードセルの自作など再検討し比較的安価に構築することができたため次年度使用額が生じた.一方で,当初計画にないチタン棒材も検討対象に含めることを計画しており,それにかかわる材料購入,ロードセル作成材料の購入で使用する予定である.
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