研究課題/領域番号 |
21K03805
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
孕石 泰丈 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10402489)
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研究分担者 |
清水 毅 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40293443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 研削加工 / 工具 / 情報量エントロピー / 砥粒分布 / 画像処理 / 偏光カメラ |
研究実績の概要 |
研削加工において,工具表面に存在する砥粒の切れ刃の状態を計測・評価することは重要である.そこで本研究では,砥粒を計測する手法として感圧紙を用いた転写画像および偏光カメラ画像を用いての計測を検討する.加えて,得られた画像から画像処理,機械学習などを利用し,砥粒の分布のばらつきの評価や1つ1つの砥粒の状態評価法を提案する. 本年度は,昨年度に開発した撮影装置を用いて,加圧していく際の発色を連続で撮影し,この結果を基に近似的な3次元分布計測手法の改善を行った.昨年度までは撮影画像の後処理として各種の画像処理から砥粒分布の計測を得ていたが,それらに加えて加工の前後で評価位置を一致させるために画像相関法を用いた画像処理法を開発し,また撮影システムの改善をはかり,より頑健な撮影システムを開発した.以上の結果を国際会議(ISAAT2022;The 24th International Symposium on Advances in Abrasive Technology)にて発表を行った.また昨年導入した偏光カメラにてベルト研削工具表面の撮影と加工実験に取り組んだ.偏光カメラとマイクロレンズを組み合わせた撮影システムを用いて,未加工の工具表面と加工1分毎の工具表面を撮影し,得られた偏光画像のうち反射除去画像を用いて画像処理を得られる情報により,加工に伴う砥粒1つ1つの状態変化である砥粒の摩耗・割れ・脱落を検出するシステムを開発した.それらの結果を,2022年度砥粒加工学会学術講演会および日本機械学会第29期関東支部総会講演会にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度において,研削ベルト工具作業面の3次元的な砥粒切れ刃分布の推定を実施する予定であった.前年の課題である位置合わせについては,画像処理(画像相関法)によりその解決ができた.ただ3次元的な分布において単位体積当たりに有効切れ刃が存在する確率として比エントロピーの計算を行う方法する方法では,現在用いている研削ベルト(粒度#60)では,粒度が大きく,つまり計測される砥粒数が少なく,単位体積当たりの切れ刃の存在確率が低くなり,エントロピーによる3次元的なばらつき評価が難しいことが分かった.これを解決するためには,現在の計測範囲40mm×40mmより広げること,もしくは砥粒のサイズの小さい研削ベルトや研削砥石で検討することが挙げられる. 次に偏光カメラを用いた研削砥石の砥粒/結合剤/空孔などの分布計測と分散性評価を検討するため,ベルト研削において偏光カメラによる撮影装置と画像処理のシステムを構築した.実際に研削実験に伴う作業面の砥粒の状態変化を撮影・画像処理を行い,反射除去画像から砥粒の割れと摩耗,脱落とその位置を定量的に判別できることを明らかにした.さらにエントロピーによるばらつき評価法を取り入れるとともに,偏光方向,偏光度画像なども併せて検討を行う.こちらは予定通りに順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
研削ベルト工具作業面の3次元的な砥粒切れ刃分布の推定と分散性評価において次の課題は,3次元的な分布において単位体積当たりに有効切れ刃が存在する確率を算出するために適した評価領域サイズ,あるいは砥粒サイズの検討となる.また面に分布する砥粒のばらつきを評価する比エントロピーの計算方法から,3次元への拡張の計算手法はすでに着手しているが,それらの計算手法と評価領域サイズ・砥粒サイズの検討をシミュレーションにより明らかにし,2023年度中に研削ベルトにおける3次元的な砥粒分散性評価手法の構築を目指す. 次に偏光カメラを用いた研削砥石の砥粒/結合剤/空孔などの分布計測と状態評価では,実際に研削実験に伴う作業面の砥粒の状態変化を撮影・画像処理を行い,反射除去画像から砥粒の割れと摩耗,脱落とその位置を定量的に判別できることを明らかにした.しかしこれはまだ1種類の研削ベルトにて確認したのみであるため,他の種類・番号の砥粒を用いた検討が必要である.併せて,現在は加工の初期段階(10分程度)の変化を計測・評価しているので,さらに工具寿命までの実験・評価を行い,本手法の有効性を確認する.また偏光カメラから得られた結果に,前述の分散性評価手法を取り入れ,砥粒の摩耗・割れ・脱落のような状態のばらつきが,どのように加工能率・加工精度あるいは工具寿命に影響を与えるかを加工実験を通して明らかにし,偏光カメラによる砥粒の状態を含めた分残性評価手法の構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初申請時に予定していた国内会議・国際会議での発表がオンラインとなり、旅費のための使用額が減額した.またエントロピー評価の計算手法や画像処理など検討が多くなったため,加工実験のための感圧紙,研削ベルト,砥石,加工用材料を必要とせず,これらの使用額が減額した.併せて前年と同様に砥粒分布をレプリカ法で取得ができず,3D計測装置を用いて直接計測する方法をとったため,レプリカにかかる費用が減額した. 2023年度では,今後の研究の推進方策で述べた評価領域サイズ・砥粒サイズを取得するための,新たな装置の開発とカメラ・レンズの購入に前年度の繰り越し分を使用し,さらに残額がある場合は,当初の予定の研削砥石の購入など加工実験のための消耗品と国内・国際会議での発表,論文発表の費用の不足分として使用する.
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