研究課題/領域番号 |
21K03811
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
丘 華 九州産業大学, 理工学部, 教授 (40227335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機械エンジニアリング / 工作機械加工精度 / NC加減速制御 / 運動誤差解析モデル / 工具経路運動軌跡のシミュレーション方法 / 実験検証 |
研究実績の概要 |
マシニングセンタ(MC)を使用して曲線輪郭を精密に加工する場合、得られた輪郭の形状精度が加工中に用いた工具経路の運動誤差と強く関連している。MCのNC装置内部の工具経路構成セグメントの加減速運動制御方式と関連パラメータの値が分かれば、切削実験をせずに切削条件に対応する工具経路の運動誤差ないし加工輪郭の形状誤差を把握することは可能であるが、通常では、MCの使用者にとって、このようなNC制御の詳細情報が開示されていない。 本課題では、MCの使用者の立場から、比較的簡単な手段によって必要なMCのNC加減速制御のパラメータを確定する方法と、多数の短い補間セグメントからなる工具経路を対象に、指定される運動条件に対して、セグメントの加減速運動に起因する工具経路をシミュレーションしてその軌跡誤差を効率的に推定する方法の確立を目的とする。また、近年にMCのNCシステムに多く採用された加工モードやAI先行・輪郭制御技術と工具経路運動誤差抑制との関連についても検討を加え、それらの技術の現場活用に実用的な参考を提供する。本年度の主な研究成果として、以下の通りである。 1.対象MCに採用されたNC加減速制御方式における関連パラメータおよびその値を明らかにした。それによって、直線補間セグメントのNC加減速運動モデルの構築が可能となる。 2.直線補間セグメントのNC加減速運動モデルを確立した。それに基づいてMCの直線補間工具経路運動軌跡のシミュレーション方法を提案した。 3.実測したMC工具経路の運動軌跡、シミュレーションした工具経路軌跡、加工したワーク輪郭の実測輪郭形状誤差を比較する結果から、提案した運動誤差モデルと工具経路シミュレーション方法の妥当性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究は基本的に計画通りに実施されている。 1.対象MCに採用されたNC加減速制御方式における関連パラメータについて、実測したMCの工具経路運動軌跡から、必要なパラメータを確定することができた。また、測定実験と数値検証の両面から、これらのパラメータの実際値について、NCシステムの取説に記録した値、または、それから簡単な換算によって推定する値を利用可能であることも確認できた。 2.現在広く利用されているNC直線加減速制御について、短いセグメントを含め、比較的簡単な形を持ち、必要なパラメータが少ない直線補間セグメントのNC加減速運動モデルを提案した。工具経路を構成する各セグメントの運動がそれぞれ独立に作動し、それらの合成運動により実際の工具経路を生成するという条件の下で、MCの直線補間工具経路運動軌跡のシミュレーション方法を提案した。この方法はアルゴリズムが簡明でプログラミング作業も容易である。 3.KGM交差格子測定装置を使用して、種々の運動条件で実測したMC工具経路の運動軌跡を同じ運動条件を用いてシミュレーションした工具経路軌跡、および実際に加工したワーク輪郭の実測輪郭形状誤差と比較する結果から、提案した運動誤差モデルと工具経路シミュレーション方法の妥当性が確認された。その結果、対象MCについて、切削実験をせずに工具経路に及ぼす直線補間セグメントのNC加減速運動の影響を推定して把握する可能性が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以後には当初の計画に従い、以下の研究内容を実施する予定である。 1.NC直線加減速制御について、円弧補間セグメントのNC加減速運動モデルを確立し、それに基づいてMCの円弧補間工具経路運動軌跡のシミュレーション方法を開発する。 2.実機MCを利用して、種々の運動条件の下で実際の工具経路運動軌跡を測定し、同条件でシミュレーションした運動軌跡の結果と比較することにより、提案運動モデルとシミュレーション方法の妥当性を検証する。また、3次元座標測定機を利用して同じ運動条件で切削したワークの輪郭形状を測定して、得られた輪郭形状誤差とNC加減速制御との関連性についても検討を加える。 3.提案した工具経路運動軌跡のシミュレーション方法をツールとして、MCのNC加工モードやNCシステムに採用されるAI先行・輪郭制御技術と実際の工具経路運動誤差抑制との関連と効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の状況により、本年度に予定された学会出張はすべてキャンセルしたからである。次年度に状況に応じて早く学会出張を計画する。
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