マシニングセンタ(MC)を使用して曲線輪郭を精密に加工する場合、得られた輪郭の形状精度が加工中に用いた工具経路の運動誤差と強く関連している。MCのNC装置内部の工具経路構成セグメントの加減速運動制御方式と関連パラメータの値が分かれば、切削実験をせずに切削条件に対応する工具経路の運動誤差ないし加工輪郭の形状誤差を把握することは可能であるが、通常では、MCの使用者にとって、このようなNC制御の詳細情報が開示されていない。 本課題では、MCの使用者の立場から、パラメータ同定とともに、多数の短い補間セグメントからなる工具経路を対象に、指定される運動条件に対して、セグメントの加減速運動に起因する工具経路をシミュレーションしてその軌跡誤差を効率的に推定する方法の確立を目的とする。また、近年にMCのNCシステムに多く採用されたNC加工モードやAI先行・輪郭制御技術と工具経路運動誤差抑制との関連についても検討を加え、それらの技術の現場活用に実用的な参考を提供する。本年度の主な研究成果として、以下の通りである。 1.工具経路のシミュレーション結果に基づき、運動誤差をそのまま逆補正する形で工具経路を簡単に修正することにより、送り速度を落とさず、実際の円弧補間工具経路の運動精度を大幅に改善する可能性が確認された。この方法は切削実験の実施が必要ないので、実用性と利便性の面に十分価値がある。 2.対象MCのNCシステムのNC加工モードについて、関連パラメータと設定値とともに、工具経路運動誤差の抑制効果を明らかにした。また、既報の工具経路運動軌跡のシミュレーション方法にその影響の評価計算も組み込んでいる。 3.シミュレーションと実験検証の両面から、非常に短いセグメントやNCブロック処理時間や高速高精度輪郭加工機能などによる工具経路運動軌跡の影響について検討した結果、実用上有益な知見が多数得られた。
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