研究課題/領域番号 |
21K03813
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
島名 賢児 鹿児島工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (90353359)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小径エンドミル加工 / 工具たわみ |
研究実績の概要 |
エンドミルを含む主軸振動系の振動パラメータを、電磁力を用いてスイープ加振試験により同定し、またケイ素鋼板円筒部の打撃試験およびエンドミル先端の打撃試験によって求めた振動系の振動パラメータと比較し、以下の結果を得た。まず1点目として、予め求めておいた電磁石の回路のパラメータを併用し、ケイ素鋼板円筒部の電磁力によるスイープ加振で得られた動的コンプライアンスを用いて、エンドミルを含めツールホルダ系の自由振動パラメータを同定することができた。2点目として、ケイ素鋼板円筒部の打撃試験により得られた動的コンプライアンスから同定したツールホルダ系の自由振動のパラメータは、スイープ加振で得られた振動系のパラメータに比べ、エンドミルの質量で6%、減衰係数で36%の差が見られた。3点目として、エンドミル先端の打撃試験により得られた動的コンプライアンスから同定したツールホルダ系の自由振動のパラメータは、スイープ加振で得られた振動系のパラメータに比べ、ツールホルダの質量で14%、エンドミルの質量で2%、減衰係数で18%の差が見られた。以上のことから、電磁力によるスイープ加振で得られたハイブリット主軸の自由振動のパラメータは、打撃試験で求めた自由振動のパラメータとほぼ一致したと言える。 さらに、ハイブリッド主軸による小径エンドミル加工において、たわみに起因する加工誤差を低減する方法を提案するため、ハイブリッド主軸の電磁力による静剛性の向上による小径エンドミルのたわみによる加工誤差の低減について検討し、以下の結果を得た。1点目として、切削実験においてコンプライアンスの制御によるびびり振動の抑制により加工面の凹凸は小さくなった。2点目として、直流電流に対するエンドミル先端の静的なたわみ量を測定した結果、電流の最大値である8Aに対し、エンドミル先端のたわみは約30μmであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主軸振動系を2自由度と仮定したモデルを用い、電磁力によるスイープ加振により得られた動的コンプライアンスから、試行錯誤により振動パラメータを同定することができた。しかし、試行錯誤によるパラメータの同定には知識と経験が必要なため、実機で使えるようにするためには、自動的に高い精度で振動パラメータを同定する方法を確立する必要がある。 主軸振動系を2自由度と仮定したモデルを用い、電磁力によるスイープ加振により得られた動的コンプライアンスから、試行錯誤により振動パラメータを同定することができた。しかし、試行錯誤によるパラメータの同定には知識と経験が必要なため、実機で使えるようにするためには、自動的に高い精度で振動パラメータを同定する方法を確立する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
磁気軸受の電磁力によるスイープ加振により得られたケイ素鋼板円筒部の直接コンプライアンスとエンドミルの相互コンプライアンスを示す。従来の研究によれば、実験モーダル解析の直接法を用いれば、動的コンプライアンスから振動系のパラメータを推定できることが報告されている。しかし、電磁力によるスイープ加振によって得られる動的コンプライアンスには、電磁石の回路の特性が含まれており、従来の振動系のみを考慮した方法では推定誤差が大きくなってしまう。そこで、電磁石の特性を含めたマトリクスの計算モデルを導入し、振動系のパラメータを高い精度で推定できる方法を提案し、有効性を検証する。 さらに、電流アンプにスイープ信号を入力し、磁気軸受でケイ素鋼板円筒部を加振して得られたエンドミルの振動振幅と位相を測定し、2次の振動モードの共振点1380Hzでのコンプライアンスの振幅は約40μm/V(A)であった。したがって、電流の最大振幅を8Aとすれば、エンドミル先端の最大振幅は320μmとなり、ダウンカットでのたわみに起因する最大誤差380μmは40μm程度まで低減できることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた機器が、昨今の半導体不足による納期遅延の影響を受けたため、改めて機器選定の見直しを行っている。 令和4年度は最適な機器の購入を行い、実験を加速させる予定。
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