近年、金型の加工能率の向上が極めて重要になっている。金型の深リブ溝、深隅部などは小径エンドミル工具を用いて突出し量を大きくする必要があるため、工具のたわみやびびり振動が発生しやすく、小径エンドミルを用いた金型の高能率、高精度の加工は困難である。小径エンドミル加工における工具たわみに起因する加工誤差の推定について、これまで本研究室では渦電流センサによりツールホルダ下端部の変位量を測定し、工具先端の変位量を推定する方法[1]を提案してきた。その後、玉軸受と磁気軸受で支持される複合型主軸を考案し、この複合型主軸の内部に組み込まれた渦電流センサによって測定された、加工中の磁気軸受部で発生する変位量から工具先端の変位量を推定する手法についての有効性を検証するというテーマの着想に至った。本研究では、玉軸受と磁気軸受で支持される複合型主軸に組み込まれた渦電流センサにより小径エンドミル先端部のたわみ量の高精度な推定を目的としている。実験では汎用の縦型マシニングセンタを用い、渦電流センサにより測定されたツールホルダに取り付けられたケイ素鋼板の変位量からエンドミル先端の変位量を推定することができれば、最終的には、複合型主軸の磁気軸受部の電磁力により小径エンドミル工具に発生する工具たわみやびびり振動の抑制に繋げられると考えている。ケイ素鋼板を取り付けたツールホルダ下端部の変位を渦電流センサにより測定しながら切削実験を行い、切削中のツールホルダ下端部の変位量から工具先端の変位量を推定する手法について検証を行った。軸方向の切込み深さを直線的に増加させる切削では、送り方向の加工誤差は、ダウンカットとアップカット共に垂直方向の切削抵抗と定性的にほぼ一致する傾向が見られた。一方、エンドミルの軸方向の加工誤差は、ダウンカットでは切削抵抗と定性的にほぼ一致したが、アップカットでは明確な関係性が見られなかった。
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