研究課題/領域番号 |
21K03817
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高橋 崇宏 静岡大学, 工学部, 准教授 (50324330)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 化学気相成長法 / 反応機構 / 反応モデル / 人工知能 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
化学気相成長(CVD)プロセスを対象とした反応機構自動解析システムの開発を行った。特に実験データから反応機構(反応モデル)を究明する人工知能部の開発に注力した。 まず、量産用途向けの大規模商用装置として実用的に用いられている拡散炉を対象として、支配方程式の定式化を行い成膜種の濃度分布を見積もる解析解を導いた。これにより従来の計算方法と比較して高速な解析が可能となり、実用的な計算速度で、拡散炉内部における反応機構を究明することが可能となった。そして、文献調査を行い、拡散炉における成膜実験データを収集した。そして、これらの成膜実験データを用いて自動解析システムで解析を行い、妥当な反応機構を究明する能力が反応工学を専門とする研究者に対抗しうる解析能力を有することを示した。さらに、反応機構の自動解析アルゴリズムに多目的最適化アルゴリズムを導入し、解析結果の評価と検証を行った。その結果、多様な反応機構候補を高速かつ大量に提案することが可能となり、研究者自身による解析結果と比較して、実用性と信頼性を向上できることが分かった。 同様に、CVDの円管型反応装置も解析対象となるようにシステムの改善と解析結果の評価を行った。円管型反応装置は、形状の単純さから研究者による多くの解析報告例があり、システムの汎用性を高めるととともに、解析能力の評価の信頼性を向上することができた。 一方、現在、自動解析システムでは、1次反応の組み合わせによる反応機構を対象としているが、非線形な反応系もシステムの解析対象とするために、非線形反応系に関する成膜実験データの文献調査を行った。また、さらに複雑だが実用性の高いCVD装置に対応するため、流体力学ソフトウェア(CFD)をシステムの取り込むことを目指し、CFDに関する文献調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
システムの解析アルゴリズムに不具合が見つかり、解析結果をわずかに劣化させていることが判明した。そのため、新たな手法を考案した上で、解析アルゴリズムを改善することが必要となった。 また、非線形反応系への対応とCFDの導入はマンパワー不足により文献調査段階にある。そのため、研究開発の継続が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
反応機構自動解析システムの不具合を解消するため、引き続きアルゴリズムの見直しと新規アルゴリズムの導入を検討していく。解析性能を評価するため、より多くの成膜実験データを用いて検証を行う。 CFDの導入速度を上げるため、CFDソフトウェアのメーカーとコンサルタント契約をして、相談を行いながら効率的に導入を行っていく。 現在の反応機構自動解析システムを発展させ、自動実験計画システムの構築にとりかかる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による外出制限によって、学会発表、業者や同業者との相談の機会が失われたり、延期されたりしたため、出張の制限が行われるとともに機器やソフトウェアの導入時期が遅れることとなった。 次年度は、選定の遅れたワークステーション、ソフトウェアの導入を進めるとともに、その他の備品、消耗品の導入を進めていく。また、正常な開催に戻る予定となっている学会発表などを行い、計画的に出張を行っていく。
|