加工機や計測機に用いられる直交座標形メカニズムの直線運動機構では一般に位置決め方向のみのフィードバック制御しか行われず,機構の運動の真直度誤差や姿勢誤差に起因するアッベ誤差が発生し,空間的位置決め精度向上が困難であった.本研究の最終目標は,直線運動機構の位置決め方向を除く5方向の微小な運動誤差(上下・左右の運動の真直度誤差および3軸回りの姿勢誤差)をインプロセスで非接触に計測し,アッベ誤差の補正に用いることである. 初年度は線状レーザ光源,円筒ミラーおよび二分割フォトダイオードを2組用いてyおよびz方向並進2方向の微小変位計測実験を行った.次年度は,フォトディテクタに入射するレーザ光強度や線幅の変化の影響を排除するため,スポットレーザ光およびフォトダイオードの表面抵抗を利用した非分割型の受光素子である二次元PSDを採用した.yおよびz方向の2次元の変位計測実験を行った結果,±20μmの測定範囲内で非線形誤差は1μmp-p以下となり,変位計測精度が飛躍的に向上した. 令和5年度は,レーザ光の射出方向が時間経過や室温変動などにより変化することをインプロセスで観測・補正するために,光路中に置かれたビームスプリッタおよび二次元PSDを別途設置した.さらにこのPSDでのレーザスポット変位を高感度で検出するためにビーム射出角度を拡大するためのボールレンズを設置した.予備実験において,ターゲットを固定した場合において,上記2系統のPSDで測定されるレーザ光の変位を計測した.前述のレーザ光射出方向に変動があれば,2つのPSD上では同様の変位が得られるはずであるが,測定結果では2つの変位の間には明確な相関が得られなかった.原因としては,射出法光の変動による変位よりも各光学素子を固定している器具類の熱的膨張などが支配的になったためと推察する.
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