ゴムなどの粘弾性材料が硬い粗面上を摺動する場合,粗面突起がゴムを変形させる際に生じる変形抵抗がヒステリシス摩擦力として現れる.一般的に,ヒステリシス摩擦力を設計するためにはゴム材料のtanδ(弾性の性質と粘性の性質のどちらが支配的であるかを示す物理量であり貯蔵弾性率と損失弾性率の比として表される)を制御する場合が多い. そこで本研究では,硬質粒子分散による表面分剛性分布付与に基づいたヒステリシス摩擦力の制御手法を提案する.バルクの剛性分布付与を摩擦制御に積極的に利用する本手法では,体系化された構造力学の既存知識(非線形FEM技術なども含む)をフルに活用できるうえに,3Dプリンタなどの最先端のバルク材料創製技術との融合により既往の縛りから解放された新しい発想のもとで摩擦力の定量設計が可能になると期待される.本研究プロジェクト期間において,提案する摩擦制御手法の妥当性を検証するためにモデル試験を実施した.その結果,以下の結論を得た. (1)剛性分布を有するゴム表面が相手面突起を乗り越える際に,高剛性領域が相手面突起に引っ掛かりやすくなり(Interlocking効果が生じて)エネルギー散逸量が増加する.その結果,ヒステリシス摩擦力は増加する. (2)硬質粒子分散による摩擦増大効果は,分散した粒子直径と相手面粗さの突起が同じオーダになる際に効果的に発現する.ただし,硬質粒子分散により耐摩耗性が悪化する場合もあり,摩擦増大効果と耐摩耗性向上の両立には今後の検討が必要である.
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