研究課題
2023年度は,階層構造を有するポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルの潤滑メカニズムの検討のため,階層構造ハイドロゲルの製作およびその力学・摩擦特性評価を行った.平均重合度1700,ケン化度98.0~99.0mol%のPVAの15wt%水溶液を原料とし,60℃,80%RHの高温高湿環境下にて乾燥処理を行い作製した高弾性率PVAキャストドライゲル上に,8℃,50%RHの低温環境下で乾燥処理を行った低弾性率PVAキャストドライゲルを積層した階層構造ハイドロゲルを作製した.また,比較用として,各層単層のみからなるゲルも作製した.圧縮応力緩和試験により得た応力緩和曲線に数理モデルをフィッティングし,そこから各層の透水率を算出したところ,下層側のゲルの方が拡散係数が低く,低透水率であった.摩擦試験においては,2022年度とは異なり,摩擦時の接触域が常に同一の条件を設定し,摩擦試験中のゲル中の水分回復が起こらない条件を設定した.その結果,軟質上層の厚さにより摩擦挙動が変化することは2022年度の試験と同様であったが,上層が厚いほど摩擦が低くなるという点はこれまでと逆の結果となった.上層が薄いほど同一荷重時の接触面積が高くなっており,それにより周囲との圧力差によりゲル中の水分流出が増加し,摩擦が増大したと考えられる.また,階層ゲルの上層に用いられるゲル単層を用いて,重水をトレーサーとして摩擦時の水分流出入を実測する手法を構築した.そして,摩擦試験時の速度や荷重によりゲルからの水分流出力が変化するとともに,高摩擦速度では摩擦面間の微小すき間に引き込まれた流体の動圧により,ゲルからの水分流出が抑えられる可能性を示唆した.
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Tribology International
巻: 178 ページ: 108100~108100
10.1016/j.triboint.2022.108100