研究課題/領域番号 |
21K03841
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
張 暁友 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (30431985)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気軸受 / 遠心ポンプ / 人工腎臓 / 電磁アクチュエータ |
研究実績の概要 |
腎臓病患者用の血液透析機器は大型であり,システムが複雑である.このため,患者は毎週3回通院し,毎回4時間程度の治療を受けなければならない.このように既存の透析治療は,患者の生活の質を低下させるケースが多くなる. 患者の生活の質を向上させるために,本研究では,磁気浮上の非接触支持による無摩擦・無摩耗の特徴を生かし,体内に埋込み可能なコンパクトかつ省エネルギー,1自由度制御型磁気浮上遠心ポンプの開発,および人工腎臓への応用可能性を検討することを目的とする. 本年度では,まず1自由度制御型磁気軸受の構成と駆動原理を検討した.本磁気軸受は,互いに反発力が発生するように配置された内周部の永久磁石対と,フランジ状のバックヨークとコイルからなる電磁石・永久磁石より構成される.内周部の永久磁石対は,4ペアの着磁方向の異なる永久磁石リングより構成され,それぞれロータとステータの上下に配置される.ロータが径方向に変位するときあるいは傾くとき,これらの永久磁石対が,その変位を抑える復元力あるいは傾きを抑える復元トルクが発生する.すなわち,ロータの半径方向と傾き方向を合わせて4自由度の運動を拘束する.一方で,外周部の電磁石・永久磁石は,ロータの軸方向の運動を制御する.また,永久磁石の配置よりバイアス磁束を提供し,エネルギーの消費を低減できる. また,有限要素法を用いた磁場解析を行い,コイルと永久磁石の寸法を探索し,磁気軸受の設計を行った.さらに,1自由度制御型磁気軸受を試作した.試作磁気軸受の寸法は径80mm,高さ105mm,質量は1.22kgである.また,ロータの長さは94mm,最大直径は59mm,質量は0.36kgである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では,まず1自由度制御型磁気軸受の構成と駆動原理を検討した.それから,磁場解析を行ってコイルと永久磁石の寸法を探索し,磁気軸受の設計を行って試作した. ただし,コロナ禍の影響で,磁場解析と流体解析に協力する本研究室の大学院生は,遠隔授業が多くて,研究室に来る時間が少なくなるため,磁気軸受に取り組むモータとインペラの解析と設計を実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず1自由度制御型磁気軸受の電気系と制御系を構築し,その浮上性能を評価する.具体的に,磁気軸受の目標値特性(制御帯域),位置決め精度,各自由度方向の支持剛性を検討する. それから,磁気軸受に取り組むモータとインペラの解析と設計を行い,1自由度制御型磁気浮上遠心ポンプを試作する.さらに,モータの回転性能,回転数と各自由度方向の振動振幅の関係,モータの回転減衰などを検討する.また,開発した遠心ポンプを用いて血液分離実験を行い,人工腎臓への応用可能性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な部品を計画とおりに導入したが,コロナ禍の影響で旅費支出と人件費・謝金支出がなくなった.令和3年度残予算と令和4年度請求予算を合わせて,次年度では,部品購入,旅費,人件費などに使用する予定である.
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