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2021 年度 実施状況報告書

ゼーベック効果と均質回路の法則による転がり軸受内外軌道輪表面温度評価法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K03843
研究機関近畿大学

研究代表者

東崎 康嘉  近畿大学, 理工学部, 教授 (60610540)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード熱起電力 / 動的熱電対法 / 転がり軸受 / 焼付き
研究実績の概要

機械製品は回転運動を有し,軸を支持するための玉軸受が必要不可欠である.地球環境に配慮し自動車用モーターは高出力化しており,主軸が高速回転しているため,耐焼き付き性が求められる.以上のように,玉軸受は過酷な環境下で使用されており,焼付きのような軸受損傷を引き起こす可能性がある.損傷が発生する原因の1つとして,軸受温度の上昇が考えられる.この研究は軸受軌道面の温度測定を行うことで,軌道面における潤滑状態評価の展開に基礎的寄与を与えるものであると考える.
本研究では軸受軌道面の温度測定方法として動的熱電対法を提案する.動的熱電対法とは,ゼーベック効果を利用した方法であり,測定物やバルク本体を異種金属で作成することで任意の接触点や摩擦面の温度測定が可能である.本研究を行うにあたって,4種類の軸受を作製した. No.1 内輪材質S55C 転動体材質SUS304 外輪材質SUS304 測定箇所内輪-転動体間 No.2 内輪材質SUS304 転動体材質SUS304 外輪材質S55C 測定箇所外輪-転動体間 No.3 内輪材質S55C 転動体材質SUS304×1ジルコニア×8 外輪材質SUS304 測定箇所内輪-転動体間 No.4 内輪材質SUS304 転動体材質SUS304×1ジルコニア×8 外輪材質S55C 測定箇所外輪-転動体間
No.1とNo.2は発熱箇所が内輪-転動体間と外輪-転動体間の2箇所であるため内外輪の温度上昇の比較用,No.3とNo.4は転動体の材質を1球以外ジルコニア球に変更した軸受であり発熱箇所の特定用である.また,転動体の滑りと温度上昇の関係を明らかにするために,転動体の滑りの様子をハイスピードカメラで観察した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

動的熱電対法により,軸受No.1(内輪-転動体間)とNo.2(外輪-転動体間)を用いた温度測定を行った.試験パラメータは荷重が300N,100Nの2パターン,回線数が60rpmと300rpmの2パターンの計4パターンの試験を行ったところ外輪-転動体間よりも内輪-転動体間の方が温度上昇していることが確認できた.また,荷重が小さく回転数が大きいほど温度上昇する傾向が見られた.内外輪で温度上昇が異なる理由として,接触形態の違いが考えられる.外輪は静止しており,外輪-転動体間は純転がりとなるが,内輪は駆動し回転しているため,内輪と転動体の周速差により,内輪-転動体間は滑り接触が生じる.実際にハイスピードカメラを用いて内輪と転動体の周速の測定を行ったところ,30~40%程度の滑りが発生していた.以上より,転動体と内輪軌道面の間には周速差が存在し,軸受軌道面による温度上昇は,転動体と内輪軌道面の滑りによって温度上昇していると考える.
軸受No.3,No.4より(転動体1個をSUS304にして,玉1個の温度計測可能とした場合),最大転動体荷重点ではなく,転動体荷重分布域の荷重の低い箇所や外側で温度上昇していることが確認された.ハイスピードカメラを用いた観測から,上記の箇所で転動体の大きな滑り(転動体が自転していない滑り)があることが確認できた.
しかし,転動体荷重分布領域の内側で温度上昇が発生した場合や,外側で発生しない場合が存在した.また,ハイスピードカメラによる転動体の自転の観測を行っていた際に,同一箇所を観測しているにも関わらず自転しているものと自転していないものが存在した.これらは軌道面の真円度が影響していると推定される.

今後の研究の推進方策

昨年度は,軸受の内外輪や転動体の材質としてS55CやSUS304を使用し,軸受軌道面の温度測定を行った.以上の材質を選定した理由として異種金属間における熱起電力の発生が良好なことである.実際に使用されている軸受の材質は,SUJ2と呼ばれる高炭素クロム軸受鋼であり,高硬度で耐摩耗性に優れた材質である.昨年度は,S55CやSUS304に硬化処理は行わず生材の状態であった.今後の展望として,実際に使用されている軸受鋼SUJ2のような高硬度な軸受における実際の環境下に近い状態での軌道面の温度測定が必要であると考えた.そこで,S55Cに高周波焼き入れ,SUS304に真空浸炭焼き入れによる硬化処理を行い高面圧による試験を行うことを検討する.
また,ハイスピードカメラの動画を撮影している際に,自転している転動体と自転していない転動体が存在し,原因として軸受軌道面の真円度が考えられた.これにより,温度が発生する箇所と温度上昇値が周期により異なった.そのため,軸受軌道面の真円度がより良い軸受を用いることでより高い再現性を確認することが出来ると考えられるため,真円度の改善についての調査や検討を行う予定である.

次年度使用額が生じた理由

硬化した転がり軸受や真円度の良い転がり軸受の製作が困難で今期計上できなかった.製作先と協議して,製作できるように進めていく.また、スリップリングを購入する予定であり,その計画も進めていく.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 転がり軸受の軌道面温度測定に関する基礎研究2022

    • 著者名/発表者名
      植田奈央子,東﨑康嘉,尾藤駿哉,樽谷和希
    • 学会等名
      日本機械学会関西学生会2021年度学生員卒業研究発表講演会

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公開日: 2022-12-28  

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