研究課題/領域番号 |
21K03847
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
根岸 秀世 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究領域主幹 (20568208)
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研究分担者 |
近藤 雅裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10589295)
柴田 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30462873)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粒子法 / 弾性流体潤滑 / 流体工学 / マルチスケール / マルチフィジックス |
研究実績の概要 |
本研究では、複雑形状や剛体運動の扱いが容易で固体/液体/気体を統一的な計算原理で扱うことが可能な粒子法を採用し、転がり軸受内のマルチスケール・マルチフィジックスを考慮可能な弾性流体潤滑シミュレータを世界に先駆けて開発する。これにより軸受内全体の潤滑剤挙動を把握・制御し、省資源・省エネ化に資する軸受設計・運用方法の提案を実現する。本年度は当初計画通り以下の2サブテーマに注力して研究を進めた。 ①数値計算手法の構築 (1) 剛体-流体連成計算手法の改良:軸受内の転動体等機構部品の6自由度運動と潤滑剤挙動の相互干渉を考慮可能とするため、潤滑面が剛体面の場合の流体-剛体連成解析手法を再構築した。従来は流体計算にMPS法を使用していたが、角運動量保存が満たされない問題があった。そこで運動量保存、角運動量保存、熱力学的第二法則等の物理法則を満たすMoving Particle Hydrodynamics method(MPH法)を新たに流体計算に採用した。剛体計算には回転運動方程式と剛体姿勢を表現するクオータニオンの時間発展式を採用する形は踏襲し、従来のPassively Moving Solid(PMS)モデルに基づく流体-剛体連成解析手法を再構築した。転がり円筒を使った流体潤滑実験を対象とした検証解析を改めて実施し、転がり円筒の停止過程を定量的に再現した。 ②物理数学モデルの構築 (1) 負圧計算の実現:軸受内では摺動部下流の拡大流路形状において周囲圧力より圧力が低下する負圧が発生し、その程度が大きいとキャビテーションが発生する場合がある。本年度は、粒子法が従来苦手とする負圧の計算を実現した。具体的には、前述のMPH法を採用し、Two-potential表面張力モデルを導入することで実現した。構築した手法はくさび膜および絞り膜の基礎検証問題で定量的に負圧を計算できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、2サブテーマ(①数値計算手法の構築、②物理数学モデルの構築)に注力して研究を進めたことで、今後のベースとなる流体-剛体連成解析手法および負圧計算手法を獲得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
FY2023も、2サブテーマ(①数値計算手法の構築、②物理数学モデルの構築)に注力して必要な計算手法および物理数学モデルの構築を進める。また③軸受統合シミュレータの構築を進め、今後の大規模並列計算を見据えた計算プログラムの開発を実施する。また④検証実験も必要に応じて実施して、検証データ獲得を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果創出タイミングの都合により、国際会議での発表を次年度に変更した。また研究進捗の状況により、検証実験も次年度に持ち越しとなったため次年度使用額が発生した。次年度では、次年度助成金と合わせて確実に使用していく予定である。
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