研究課題/領域番号 |
21K03848
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
船崎 健一 岩手大学, 理工学部, 教授 (00219081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低圧タービン / 空力損失 / PIV / POD・DMD / LES / 実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、空間・時間解像度を向上させたPIVの開発を進め、それを用いて設計点及び非設計点における高負荷低圧タービン翼列内のwake流入条件下での詳細計測を行い、タービン内非定常速度場・圧力馬を把握するとともに、決定論的及び確率的統計データの把握を行うことを目的としている。令和3年度では、【実験装置の大幅改修】、【POD・DMDデータ分析手法の開発】および【比較参照可能な高精度LES解析】に主として取り組んだ。 【実験装置の大幅改修】では、wake流入時の低圧タービン翌列性能計測用試験風洞をPIV計測用に大幅に改良し、剥離泡を伴う負圧面境界層の非定常挙動を、wake有り・無しの状態で計測可能なレベルにまで試験装置の改良を推し進めた。得られた速度データを過去に実施した熱線流速計で得た結果と比較し、両者が良好に一致することを確認した。 【POD・DMDデータ分析手法の開発】に関しては、主として動的データ処理に適したDMD(動的モード分解)の開発に着手した。DMDは複雑な流れ構造の特徴的モードを抽出するのに適した手法であるが、まだ開発途上の手法でもあり、どの方法を具体的に選択すべきか、取り組む課題は多く存在する。そこで、今回は時系列PIV計測データに対して記念注目を集めている二種類のDMDアルゴリズム(spDMD,tlsDMD) をそれぞれ開発し、そのコードを別々に用いて速度場の分析を行った。その際,特に再構築性能の比較や同定される各モードの固有値の分布状況などに関する検証を行った。 【比較参照可能な高精度LES解析】では、汎用コードの機能を用い、複数の条件下における高負荷低圧タービン翼まわりの非定常流解析を実施した。これにより、移動円柱下流の流れ構造や円柱由来の損失、また、翼列通過後の円柱wakeの変形やそれに伴う新たな混合損失の発生状況などを詳細かつ定量的に把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画では、令和3年度中の研究計画は以下の通りである。 ①【低圧タービン翼列非定常流れ場計測と全圧損失(定常)との関係性調査及び数値解析@設計点】(1)低圧タービン翼列試験装置をPIV計測用に大幅改修改良 (2)定常及び非定常(wake流入)条件下でのPIV及による翼まわり非定常速度場の計測及び熱線流速計(CTA)による補完的計測 (3) Hi-Fi CFDコード(LES)による流れ場解析(4)得られた速度場データの分析 ②【PIV速度データを用いた非定常全圧損失評価手法の開発(計算コード開発)】(1)全圧輸送方程式の解析コードの開発 ①については概ね全てを実施することができている。②については、基本的には非圧縮の圧力方程式の解法であり、難度は必ずしも高くはないが、圧力に関する境界条件を適切に課す必要があり、実験系を踏まえたコーディングが必要あり、その調査および調整に時間を要したため、取り組みとしては50%程度に留まってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
【低圧タービン翼列非定常流れ場計測と全圧損失(非定常)との関係性調査及び数値解析】 今年度は、昨年度に取り組んだ課題【実験装置の大幅改修】、【POD・DMDデータ分析手法の開発】および【比較参照可能な高精度LES解析】の完成度を高め、非定常流れ場中にある低圧タービン翼列の空力損失に関する詳細な調査を、複数の条件に対して実施する。具体的には昨年度実施の設計点での計測に加え、部分負荷(非設計点)での実験を行い、それによる非定常損失の知見を蓄積する。また、wake発生のための円柱径や生態模倣を取り入れた複雑表面形状の円柱を用い、より複雑な非定常場を再現する。これらのデータに対して、より精緻化したPOD・DMD手法を適用し、損失を特徴づける流れの構造抽出を試みる。さらに、実験データを補完するためのデータを得るため、高精度LESを実験条件と同様の条件で実施する。 【PIV速度データを用いた非定常全圧損失評価手法の開発と検証】 昨年度の一部未実施だった圧力方程式コードへの実験結果の組み込み作業を行い、まず圧力場の推定を行う。これにより、別途計測した翼列全圧損失の推定精度を検証する。この検証後に、圧力方程式から全圧を推定するためのコード開発に着手し、時間平均データとの比較によりコードの検証作業を進める。
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