研究課題/領域番号 |
21K03852
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内山 知実 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (90193911)
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研究分担者 |
高牟禮 光太郎 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (80847335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気液二相流 / タービン流量計 |
研究実績の概要 |
円管内を流れる常温常圧の気液二相流を対象として,気相と液相に分離することなく,気相と液相の流量を同時に高精度で測定できる方法を開発した.タービン式流量計に準じる独創的な測定方法である.ロータは4枚の羽根をもち,二相流で回転する.このロータ回転数Nを計測した.さらに,タービン式流量計の上流と下流の円管に圧力センサを設置し,2か所の圧力を測定し,その差Δpも求めた.本研究では,NとΔpにより,二相流全体の流量Qtpに対する気相流量の割合である気相体積流量比βが一意に定まることを見出した.つまり,N,Δpおよびβの関係を予めデータベースとして把握しておけば,NとΔpの測定を通してβの値を測定(同定)できることなる.一方,QtpはNと一対一の関係にあることも発見できた.以上より,NとΔpの値を測定すれば,Qtpとβの値が判り,これらの値から気液各相の流量が計算される.この測定方法の精度を検証したところ,フルスケール精度は,気相流量が3.9%,液相流量が3%であり,これまで提案されている測定方法の精度とほぼ同じあるいは高いことを確認できた.ただし,上述の結果は,気泡が液相中を独立して流れる,気泡流の領域に対する条件に限定されるものである. 研究成果は,国際会議で口頭発表し,センサに関する国際雑誌に論文を投稿した. 当初の目的は,NおよびΔpの時間変化の尖り度など,流量と密接に関係する統計的変数を発見し,ニューラルネットワークを援用することで流量を同定する方法を創出することであった.しかし,今年度に得られた成果は,この目標の大部分を補完し,達成するものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請時に計画していた,ロータ回転数Nとタービン式流量計の上流と下流の圧力差Δpの時間変化を測定し,その統計的特徴量を算出し,各相流量との関係を見出すことはできなかった.さらに,ニューラルネットワークを援用する測定方法の創出には至っていない.つまり,当初の計画は完全には達成できていない.しかし,Nの測定値から二相流全体の流量を知ることができ,さらにNとΔpの時間平均値を測定すれば気相体積流量比βを把握できることを発見した.これにより,NとΔpの測定を通して各相流量を高精度で測定(同定)できる方法の創出に成功した.また,測定方法の精度を検証したところ,フルスケール精度は,気相流量が3.9%,液相流量が3%であり,これまで提案されている測定方法の精度とほぼ同じあるいは高いことを確認できた.以上の成果より,当初予定していた方法とは少し異なるものの,液相と液相の流量を同時に測定する方法を開発できたことから,研究進捗はおおむね順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
上述の研究成果は,気泡が液相中を独立して流れる,気泡流の領域に対する条件に限定されるものである.今後は,気相体積流量比が高いチャーン流の流量範囲へ本測定方法を拡張したい.それに成功すれば,実用レベルの流量計となるため,民間企業との共同研究に発展させ,実証実験の実施を予定したい. 研究申請時に計画していた,ロータ回転数とタービン式流量計の上流と下流の圧力差の時間変化を測定し,その統計的特徴量を算出し,各相流量との関係を見出すことに再挑戦したい.その関係を用いて,ニューラルネットワークを援用することにより,各相流量を同時に同定する独創的な測定方法を確立したい.気液二相流の流量測定に深層学習を適用した研究例は見当たらず,新規性に優れた研究に発展するものと期待できる. 測定精度の改善にも取り組みたい.ロータの構造を改良することで,気相流量に対して敏感に反応するロータ回転数が発生するものと予測している.たとえば,羽根数を増すこと,あるいはロータのベアリング部の摩擦を低減することで,回転数の時間変化率が変わることが想定され,測定精度の向上に寄与するのではないかと考えられる.
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