気体と液体が混在して相互作用を及ぼし合いながら流れる常温常圧の気液二相流を対象として,気相と液相に分離することなく,各相の流量を同時に高精度で測定できる方法を開発した.タービン流量計を適用する新奇の方法である.4枚の羽根をもつロータが二相流で回転する.このロータ回転数は,既存の回転計で容易に測定でき,計測値をNとする.またタービン流量計の上流と下流の円管に圧力センサを接続して各位置の圧力を測定し,その差をΔptpとする.本研究では,NとΔptpにより,二相流全体の流量Qtpおよび気相流量の割合である気相体積流量比βが一意に定まることを発見した.つまり,N,Δpおよびβの関係を予めデータベースとして把握しておけば,NとΔptpの測定を通してβの値を測定(同定)できることなる.一方,QtpはNと一対一の関係にあることも見出した.以上より,NとΔptpの値を測定すれば,Qtpとβの値が判り,これらの値から気液各相の流量が計算される.NとΔptpには時間平均値を用いたが,時間平均のための計測時間を変化させた.また,圧力測定位置も上流側および下流側に変化させた.その結果,フルスケール精度は,Qtpが3.1 %,βが4.8 %,気相流量が3.9%,液相流量が3%であった.これらの精度は,既存の測定方法の値とほぼ同じあるいは高いことを確認できた.この研究成果は,国際ジャーナルsensorsに掲載された. 当初の目的は,NおよびΔptpの時間変化の尖り度など,流量と密接に関係する統計的変数を発見し,ニューラルネットワークを援用することで流量を同定する方法を創出することであった.しかし,今年度の成果は,この目標の大部分を補完し,達成するものであった.また,自己創出した電力でインターネットとの無線通信を可能とし,流量データをサーバにアップロードするIoT装置の開発も目指したが,実現しなかった.
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