研究課題/領域番号 |
21K03853
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 浩樹 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50432240)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高クヌッセン数流れ / 適応係数 / 境界条件 |
研究実績の概要 |
マイクロ・ナノスケールの熱流動場では,比表面積が大きくなることからその構造自体に境界条件の影響を強く受ける.特に高クヌッセン数となる場合,境界条件は流体の分子の固体表面における散乱過程を意味しており,分子の固体表面の状態への適応度を統計的に表す適応係数によって表現できることが知られている.そして,数値解析からは境界条件に適用した適応係数の値の違いだけによってマイクロ熱流動場は大きく変容してしまうことが示されている.この結果は適切な適応係数を持つ固体表面を採用することにより意図した熱流動場を得られる可能性を示唆している.そこで本研究では,様々な技術や材料により実現された表面ナノ構造を持つ固体表面を幅広く探索し,様々な性状の固体表面において適応係数がどのように変化するかを調査し,それらを用いることでマイクロ熱流動場の制御を実現することを目指す. 構築した熱輸送に関するエネルギー適応係数と流動抵抗に関する接線方向運動量適応係数をそれぞれ計測するためのシステムを用いて,同一の固体表面試料に対して2つの適応係数の計測を行った.固体表面試料としては典型的なマイクロ・ナノスケールの構造とみなせる粗さの異なる工業表面を選択し,様々な材料を採用した.得られた2つの適応係数を相補的に利用して従来から広く利用されている散乱境界条件モデルへの適合に関する解析を行い,特に軽い気体分子種において特異な結果が得られることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属を中心にいくつかの素材に対し,異なる加工法を採用することによって異なる表面粗さを持つ固体表面試料を用意した.試料気体としては単原子分子気体を採用し,気体分子種の違いを比較した.その結果,類似の素材であれば表面粗さの影響はあまり大きく見られない一方で気体分子種の影響は非常に大きいことが明らかとなった.さらに,得られた適応係数を用いて既存の境界条件モデルにおけるパラメータの同定を試みた.その結果,重い気体分子種においては同定に成功した一方で,軽い気体分子種においては広く利用されている既存のモデルでは散乱状態を十分再現できない可能性があるという想定外の結果が明らかとなった.さらなる固体表面試料の探索のために,固体表面全体に対して構造を持つような固体試料の準備も進んでいる.また,より固体表面の影響が大きく出そうな表面構造に対する情報収集も行い,固体表面試料の検討,準備を開始したところである.このように進捗状況は順調であり,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
より固体表面の影響が大きく出そうな表面構造に対する新たな情報を収集したため,その固体表面試料についてさらに調査を進めるとともに,実際の計測に向けて準備を行う.適応係数の計測システムについては設置場所の移転に伴い解体が必要となったため,再構築するとともに,計測をより高精度に行うための検証実験を実施する.2つの計測システムの精度が確認されたのちには,改めて表面ナノ構造を有する固体表面試料の作製と,並行して適応係数の計測を実施していく.また金属材料を中心とした解析で明らかとなった散乱形態の解析を進めるとともに既存の境界条件モデルに対する改良の可能性を検討する.これまでに得られている結果を再現できるだけでなく新しく得られた結果についても表現できる改良モデルの検討を行う.また得られた適応係数と固体表面の関係性についても詳しく解析し,最終的には適応係数につながる固体表面の構造に関する知見を得ることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
固体表面試料の前倒しの準備及びこの分野における重要な国際会議での対面発表のための渡航費のために前倒し支払い請求を行ったが,より固体表面の影響が大きく出そうな表面構造に対する情報を収集できたことにより新たな候補の検討を始めたこと,渡航費について想定よりも下回る金額となったことから,次年度使用額が生じた.今後,新たな候補となった表面ナノ構造を有する固体表面試料を作製していく際に合わせて使用する.
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