研究課題/領域番号 |
21K03862
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
西部 光一 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (10707277)
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研究分担者 |
佐藤 光太郎 工学院大学, 工学部, 教授 (80252625)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 吸引流 / シンセティックジェット / 流体制御 / 非定常流 / 流体マニピュレータ |
研究実績の概要 |
本研究では,流体マニピュレータ開発の第一歩として,励起噴流の一種であるシンセティックジェット特有の時間特性(振動数)および同ジェット速度を調整し,吸引領域を限定するジェットパーテーションを生成することによる吸引流の方向制御技術の開発を目指している.2021年度の研究では,吸引流の方向制御に不可欠なジェットパーテーションの生成・発達に与えるシンセティックジェットの振動条件と吸引ノズル入口と被吸引壁面間距離(以下,壁面距離)の影響やシンセティックジェットの偏向度と非対称スロットの突起物長さの関係などについて,実験と数値シミュレーションの両面から調査した.得られた主な成果を以下に示す.
[1]吸引ノズルからの吸引流量を一定とした流れの可視化実験(PIV(Particle Image Velocimetry)解析)と数値シミュレーションによって,壁面距離と非対称スロットによって生成されたシンセティックジェットのストローク(周波数および速度)を調整し,同ジェットの偏向度を制御することで,吸引範囲を限定するためのジェットパーテーションを生成可能であることが確認された.また,検討した条件範囲内で,ストロークが壁面距離の2倍より大きい場合は,生成されたシンセティックジェットが直接吸引ノズルに吸い込まれ,被吸引壁面間にジェットパーテションを形成できないことが明らかとなった. [2]吸引流のみの場合とジェットパーテーションによって吸引領域を限定した場合の吸引ノズル入口部や非吸引壁面近傍と出口部の差圧を比較すると,ジェットパーテーション形成時の方が大きいことが明らかとなり,吸引力の向上が期待できる. [3]検討した条件範囲においてストロークが壁面距離の半分より小さい場合は,シンセティックジェットと連続吸引流を作動させる順番によって,吸引方向のスイッチング現象が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PIV解析をはじめとする実験と数値シミュレーション手法が概ね確立され,2021年度の目標であったストロークと壁面距離の関係に関する調査が順調に進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
2年目である2022年度は,シンセティックジェットのストロークと壁面距離に加えて,これまで一定だった吸引流量をパラメータとしてジェットパーテーションの生成・発達範囲を調査すると共に,吸引スリットの両側面に設置される非対称ノズル間に形状差を与えたり,生成されるシンセティックジェット間にストローク差や位相差を与えることで,ジェットパーテーションの対称性を崩すことによる吸引方向制御について検討を開始する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年前半までの研究目標を達成するため,噴流の偏向度に及ぼすアクチュエータの運転条件の影響を解明する必要があり,数値シミュレーションに加えて可視化実験による生成噴流の挙動の高速撮影が不可欠であった.当初の計画では既存のカメラを用いる予定であったが故障のため使用不可能となったため,前倒し申請をしUSB高速カメラK6を導入し,結果として次年度使用が生じた.翌年度前半は,今年度に引き続き第1段階の「吸引力の生成・発達条件を支配するパラメータの解明」について数値シミュレーションと実験の両面から進め,後半には予定通り,第2~3段階の「吸引流の方向制御技術の確立と偏向吸引流の可能性探索」に移る.そのため,引続き可視化実験に必要なトレーサーなどの消耗品や被吸引壁面圧力計測向け圧力変換器などの購入に使用する予定である.
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