研究実績の概要 |
本研究は,微小液滴の気液界面を対象として,気液間の質量・運動量・エネルギー輸送に関わる重要なパラメータである凝縮係数に及ぼす界面曲率の影響ならびに不純物による影響について,独自に開発した分子動力学シミュレーションプログラムを用いて定量的に明らかにする.従来は考慮されていなかったこれらの影響を定式化することで,微小液滴の成長を記述する既存モデルに改良を施し,水蒸気タービンやインクジェットプリンタ,液滴衝突を利用した半導体洗浄における流体制御などの工学的応用を始めとして,いま深刻な社会問題となっている新型コロナウイルス感染拡大における飛沫・エアロゾル伝播,集中豪雨・局地的大雨などのメソスケール顕著現象の予測精度向上に貢献することを目的とする.初年度にあたる本年度については研究計画にしたがって以下の成果が得られている:
(1)単原子分子であるアルゴンを対象物質とした分子動力学シミュレーションにおいて,気液界面の圧力分布を力学的定義に基づいて正確に求めるための統計処理を実装したプログラムを並列化し,大幅な高速化を達成した. (2)上記で開発したプログラムを用いることで分子数を増やした系の計算が可能となり,これまで計算負荷が大きいために取り組むことのできなかったサイズのナノ液滴についてシミュレーションが可能となった. (3)温度85, 90, 95, 100 Kのアルゴンのナノ液滴とその蒸気の気液平衡系において,液滴半径2~10 nmの範囲においてKelvin効果および表面張力の液滴半径依存性について定量的に明らかにした.
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